辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
晩餐会が行われる大広間へと向かう途中、
ビンセントは兄の足を止めようと声をかける。
「陛下。晩餐のスピーチについて確認が──」
「俺は今忙しい。後にしろ」
ビンセントの顔を見ることもなく、
クレオールは短く切り捨てる。
そんなことでめげてはいけない。
ビンセントは必死に並走し、
にこやかに話を続ける。
姉上のために少しでも
時間を稼がなければならないのだ。
「会場の席次ですが──」
「スピーチだの席次だの、うるさいわ!!」
苛立ちを隠さず歩くクレオール。
その険しい表情に、
ビンセントは心が折れそうになる。
──急げ。デクラン、姉上……!
しかし彼の願いとは裏腹に、
ひとりの兵が駆け込んできた。
「へ、陛下……! その……ファティマ殿下が……お姿が見当たりませぬ!!」
ビンセントの心臓が止まった。
もうバレたか!!
クレオールの足がピタリと止まり、
氷のような怒気が空気を支配する。
「……何だと?」
ビンセントは咄嗟に前へ出て
クレオールの注意を逸らし続ける。
「兄上、落ち着いてください。とりあえず私が確認してまいりますので──」
「戯言をぬかすな!!」
クレオールはビンセントを突き飛ばし、
侍従や護衛を引き連れ、
控室へと向かって駆け出した。
ビンセントは兄の足を止めようと声をかける。
「陛下。晩餐のスピーチについて確認が──」
「俺は今忙しい。後にしろ」
ビンセントの顔を見ることもなく、
クレオールは短く切り捨てる。
そんなことでめげてはいけない。
ビンセントは必死に並走し、
にこやかに話を続ける。
姉上のために少しでも
時間を稼がなければならないのだ。
「会場の席次ですが──」
「スピーチだの席次だの、うるさいわ!!」
苛立ちを隠さず歩くクレオール。
その険しい表情に、
ビンセントは心が折れそうになる。
──急げ。デクラン、姉上……!
しかし彼の願いとは裏腹に、
ひとりの兵が駆け込んできた。
「へ、陛下……! その……ファティマ殿下が……お姿が見当たりませぬ!!」
ビンセントの心臓が止まった。
もうバレたか!!
クレオールの足がピタリと止まり、
氷のような怒気が空気を支配する。
「……何だと?」
ビンセントは咄嗟に前へ出て
クレオールの注意を逸らし続ける。
「兄上、落ち着いてください。とりあえず私が確認してまいりますので──」
「戯言をぬかすな!!」
クレオールはビンセントを突き飛ばし、
侍従や護衛を引き連れ、
控室へと向かって駆け出した。