辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
デクランはしばらく黙っていたが、
絞るように本心を吐き出した。

「……怖いんだ。
 僕が想いを告げて……もし、彼女に迷惑だったら。
 彼女を困らせるくらいなら、黙っていた方がいい。」

カーティスはふっと笑う。
「デクラン。
 お前は“彼女を助ける騎士”で終わりたいのか?」

デクランの目が、大きく開いた。
「……」

「それとも——
 “彼女に選ばれる男”になりたいのか?」

胸の奥深くに、言葉が突き刺さる。

デクランは息を詰めたまま、
しばらく動けなかった。

カーティスが背を叩いた。
「お前が覚悟を決めたら、俺は手伝ってやる。
 ずっとお前の味方だ。」

それは幼い頃から何度も聞いてきた言葉だった。
だが今ほど胸に響いたことはなかった。

デクランは静かに拳を握り直した。
「……ありがとう、カーティス。」

カーティスはにやりとした。
「ファティマ様の隣に立てる男は一人しかいない。
 自分でつかみに行け。」

風が二人の間をすり抜け、
海は暗闇の向こうで優しくうねっていた。
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