辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
船は静かにアルドレイン王国の港へ滑り込んだ。

デクランたちが甲板に上がると、
すでに岸では
オルランド王とフィロメナ王妃が待っていた。
護衛たちも息をのんで整列している。

ファティマがデクランに支えられて
タラップを降りた瞬間——

「姉上……！ ファティマお姉様……！！」

フィロメナはもう堪えきれず、
ドレスの裾をつかんで走り出した。

「フィロメナ……！」

ファティマも駆け寄り、
二人は強く抱き合う。

フィロメナの涙は止まらなかった。
肩を震わせ、姉の身体を何度も確かめるように。

「よかった……本当によかった……！
　姉上が無事で……生きて戻ってきてくださって……！」

「大丈夫よ、フィロメナ。私はここにいる。
　本当に……戻って来られたのね。」

ファティマはそっと指で
フィロメナの涙を拭った。
昔と変わらない、優しい姉妹の仕草。

その姿を見守るオルランド国王は、
思わず笑みをこぼした。

「よくぞ無事で戻ってくれた、ファティマ殿。
　あなたの姿を見るまでは我々も気が気じゃなかった。」

「申し訳ございません……心配をかけましたね。」

ファティマが礼をすると、
オルランドは真剣な目で彼女を見つめ、
そっと姉妹の肩に手を置いた。
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