辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
オルランド王の先導で、
一行はアルドレインの王宮に入る。

まずは旅の疲れを癒やしてくれと
オルランドは湯殿へと案内させる。

ファティマもフィロメナ付きの侍女たちによって
全身ピカピカに磨き上げられ、
清潔なデイドレスに着替えた。

用意された客室で寛いでいると
フィロメナが訪ねてくる。
「姉上の顔を見るまで……何度も夜中に目が覚めたわ。
 姉上は大変な目に遭っているというのに、
 私だけ安全な場所にいるのが苦しくて仕方なかった。」

「そんなこと……フィロメナは何も悪くないわ。」

ファティマは妹の手を握り、
ゆっくりと微笑んだ。

「でも……あなたのおかげで私は助かった。
 あなたがデクランやヴァリニア国王に知らせ、動いてくれたから……。
 本当にありがとう、フィロメナ。」

フィロメナの瞳にまた涙が溢れる。
「姉上……私、ずっと、ずっと姉上が大好きだったの。マルヴァリスお義兄様はじめ、みんなが私をのけ者にしたけど。姉上だけは違った。いつも私を慰めてくれて。だから姉上が困っている時は絶対に力になろうって思っていたの。」

ファティマはフィロメナを静かに抱き寄せた。
「私もフィロメナが大好きよ。
 あなたが幸せそうで……それを見られるだけで、胸がいっぱいだわ。」

二人はしばらく抱き合い、
積もった思いをゆっくりほどいていった。
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