俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
そして今日はその食事会の日、ラインで雄介が迎えに来ると言ったけれど、ちょうどその近くに友人といるのでそのまま現地集合でお願いしますと言って、雄介の申し出を断った。

家を知られて面倒なことになりたくなかった。小夜子さんの孫なのにちょっと引いてしまうほど押しが強くて自分勝手に物事を進めてしまおうという所が見受けられる。

食事会は遅いランチになった。

場所は銀座の有名な懐石の料亭なのだが、ビルの最上階にありエレベーターを降りると玉砂利が引いてある所に飛び石があって、初めての人は面食らう。本当にここがビルの最上階とは思えないのだ。

木の格子戸の引き戸が、その先に見えて店の名前を入れた粋な暖簾がかかっている。

格子戸をあけるとそこには打ち水をして黒光りするタイルが玄関先まで続いていてその両側に、棕櫚竹(シュロチク)やトクサ、オリズルラン、カエデなどがセンス良く植えられている。置石には苔が生やしてある。

実はここには一度来たことがあるので、空はエレべーターの扉が開いて別世界が広がるのを見ても、ワーッと言う感動はなかった。

雄介が一番驚いていたようだ。道端夫妻は何度も来たことがあるのだろう女将さんがわざわざ玄関先で待っていてくれた。

「道端様いつもお引き立ていただいてありがとうございます。今日はとても大切な方をお連れされると聞いております。楽しみにお待ちしておりました」

「まあ、ありがとう女将さん。今日は孫の雄介と、私の大切なお友達をお連れしたのよ。よろしくお願いします」

小夜子は嬉しそうに言って、空を紹介してくれた。

「お世話になります。秋野空と申します」

簡単に挨拶して空はしっかりときれいなお辞儀をした。

「まあ、可愛くて奇麗なお友達なんですね。それにとても上品でお辞儀が素晴らしく美しいわ。うちの仲居たちに見習ってもらいたいわ。そんな風に自然に美しいお辞儀ができる人に初めて会ったわ」

女将さんは、そういって空を褒めてくれた。

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