俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
懐石は本当においしかった。食べるのがもったいないような、素敵な器に美しく盛られたお料理は目で見て香りを楽しみ味わうという和食ならではの心づくしのお料理だった。

折敷、椀盛、焼き物、預け鉢、吸い物、八寸、香の物と、お手本のような懐石料理が出されて最後に、女将さん自らが立てて下さった抹茶に練り切りが出された。

空はお茶も習っていたことがあったので、作法に基づいてお抹茶をいただいた。

それを見て小夜子が

「さすが空さんね。お点前も素晴らしいわ、ねっ女将さん」

と言って嬉しそうに小夜子もきれいな作法で抹茶を飲んだ。

「本当にお若いのに素晴らしいお嬢様だと感心しました」

「いいえ、私なんか付け焼刃で、そのうち仮面が剥がれます。ただ私は両親に捨てられて祖父母に育てられたんです。だから、年寄りに甘やかされて育てられたから礼儀を知らないとか、祖父母を悪く言われるのが嫌だったので、自分で一生懸命礼儀作法は身に付けたんです。決してお嬢様などという家柄ではないんですよ」

「そのおじい様とおばあ様は、空さんをこんないい娘さんに育てられて素晴らしい方たちよね。またお会いしたいわ」

「小夜子さんありがとうございます。二人はとても仲がいい夫婦だったんですよ。そのせいだったんですかね。私が高校2年生の時に相次いで亡くなりました。だから私は一人っきりなんです。父親はいることはいますが、鳥取に入り婿に入っています。新しい家庭で上手くやっているようです。母親はどこにいるかも生きているのかもわからないんです。兄弟もいないので本当に一人っきりなんですよ」

「そんな風には見えないね。とても大切に育てられたお嬢さんに見えるよ」

と道端会長が言ってくださった。

「はい。祖父母には本当に大切に育ててもらいました。叱られたこともないですし何かをしなさいと言われたこともないですね。本当に優しい祖父母でした。大好きな二人だったんです」
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