俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
空は自分の身の上を語ることで、道端家にはふさわしくない家の出だとわかってほしかったのだ。雄介とのことを勧められる前に諦めてもらいたかったのだ。

「じゃあ高校生の時からずっとひとりだったの?」

「はい、大学に入るまでは祖父母の家で一人で暮らしてました。大学に入ってからは近くでアパートを借りて、やっぱり一人でしたけど、でもNOAに入社してからは、同期と二人でルームシェアしているんです。だから今はすごく楽しいです」

満面の笑みで笑う空を見て、小夜子は少し涙ぐんだ。

「空さんは苦労したのね。でもそんな暗さはみじんもないわ。そんなところが素敵よ。内面から優しさと強さと思いやりが滲み出てるわね。空さんあなたと知り合えて幸せだわ」

そう言ってくれたのだが、あれ少し話が思った流れと違っているような戸惑いが…

「でも、高校の時には同級生の健吾と隼人がいてくれて、いつも面倒を見てくれて、私の保護者みたいだったんです。進路を決める三者面談にも二人がいつも隣りにいてくれて、助けてくれました。だから二人は家族の様なんです」

「それは妬けるなあ、これからは僕が守ってあげたい」

突然そんな事を言う雄介にびっくりして、目を丸くしていると、

「空さん、雄介との縁談を考えてくれないかなあ、こいつは道端家の次男だからそんな難しい立場ではないから、気楽に交際してくれれば儂も小夜も嬉しいんだが…」

「空さんぜひお願いします。半年以内には日本に帰って来て本社の企画事業部の部長になる予定なんです。そうしたら日本でいつでも会えるので寂しい思いはさせません」

“別にあんたに会えなくても寂しかないわっ、まだ2回しか会ってないのによくいうわ”
と声には出さずにいたが、これははっきり断らなくてはと声を上げようとした時、ドアが開いて

「失礼します」

と言って隼人が部屋に入ってきた時にはびっくりした。

「僕は山根隼人と申します。突然割り込んで申し訳ありません。でも、空を守るのは俺の役目なので、誰にも譲るつもりはありません」

隼人、途中で地が出ちゃってるよ。俺って言ってるし…

「隼人…、すみません彼は高校の同級生でさっき話した保護者のような友人です」

「空、友人ってなんだよ。恋人ってちゃんと言わなきゃわからないだろう」

「そっか、恋人です」

「そっかじゃないんだよ。ほんとに空はとんちんかんだなあ。ほら帰るぞ」

そう言って手を繋いで引っ張って椅子から立たせた。

「すみません。小夜子さんせっかくお孫さんとの機会ですが、私には雄介さんとお付き合いするのは難しいです」

空はぺこりとお辞儀をして、今日の食事のお礼を言って隼人とその場をあとにした。
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