俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
そして、空の中間勤務の帰り空港内の更衣室を出たところで、野崎をはじめとしたCA軍団四名に捕まった。

「あなたが秋野空さん、ちょっとお話があるんだけどそこまで来て下さる」

と野崎ではない腰ぎんちゃく1の一人がそう言って、連れて行かれた。

“あ~やっぱり来たか、お手柔らかに“とため息を飲み込んで、あとに続くと休憩室に連れ込まれた。

「あなた秋野空さんていうの?なんだかふざけた名前ね。でも、ふざけたお名前にふさわしいふざけたグランドスタッフね」

「私は自分の名前は気に入っているんですが、人の名前をどうのこうのいう前にまず自分のお名前を名乗るべきではないですか?」

「まあ、生意気ね。NOAの社員のくせに野崎さんを知らないの?わが社がほこるCAよ」

「そうですか、そういう話は聞いたことがないですね。それよりこんなところに呼びだして何の御用でしょうか」

「あなた大体図々しいのよ。そんな貧相な顔をして王子様のような山根コーパイの横に並んで恥ずかしくないの?彼くらい整った顔の極上のイケメンの横には野崎さんのような美女じゃないと釣り合わないわよ」

腰ぎんちゃく2,3も好き勝手に言ってくれる。空には気にもならないが…

確かに野崎は目鼻立ちの整った日本人離れした美人だ。脚も長くてスタイルも抜群だ。。

「そうですか。でも顔の美醜の感覚は人それぞれです。隼人は私がいいと言ってくれますし、多分顔がいいとか悪いとかそんな問題ではないと思います。心のあり様や生き様の問題なのではないですか?クレオパトラでも性格の悪い人なら好きにはならないですよね」

「何よ、私が性格が悪いとでも言いたいの?彼がNOAに入社して一番先に目を付けたのは私なのよ。ぽっとでのグランドスタッフの存在なんか、鬱陶しいに決まってるわよ。隼人に媚び売ってるの知ってるんだから、みっともないったらないわ。恥ずかしくないの」

黙っていられなくなったようで、野崎が口を出してきた。

「隼人と私は高校生の時からの付き合いです。彼がカナダに行って六年会えなかったのですが、帰って来てからまた付き合い始めたので、ぽっとではむしろ野崎さんの方ですね」

「まあ、ああ言えばこう言う口の減らない女ね。そんな事どうでもいいわ。とにかく隼人は私が必ず落として見せるから、その時になって泣かない事ね。先に諦めた方が傷は浅いわよ」

「そうよ、野崎さんに堕ちない男はいないのよ。山根コーパイも時間の問題だわ。ねえ、野崎さん」

「ふん見てなさい。泣きを見るのはどっちか、すぐにわからせてあげるわ。ホホホホホ」

そう高笑いをかまして、野崎を中心に四人は去っていった。
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