俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
はあっ、疲れた。こういうことは隼人と付き合うと、もれなくついてくるのよね。

ほんとに高校の時から何度お呼び出しされたかわからない。まあ、お呼び出しで嫌味を言われるくらいなら、全然応えないただ時間のロスがもったいないだけだ。

今ので約三十分さっさと帰れていれば、今頃マンションの最寄り駅にはついているはず、スーパーで買い物する時間をCA軍団に、盗られた感じだ。

ため息をつきながら休憩室を出ると、同じ班の後輩の亜子ちゃんが心配して待っていてくれた。

「空さん！大丈夫ですか？すごい迫力でしたねCAのお姉さま方。何か言われたんですか？」

「ちょっとね。でも心配しないで私はへっちゃらだから、ありがとう」

そういって帰宅したが、野崎たちの嫌がらせはそれだけでは収まらなかった。

野崎の班のCA達は他のCAも巻き込んで、空を見かけるとあからさまに嫌味を言ったり、“なんかさあ、イケメンのパイロットを狙ってる身の程をわきまえない嫌な女がグランドスタッフにいるんだってさ”とか言ってきたり、すれ違いざまに肩をぶつけてきたりキャリーケースで足を引かれそうになったこともある。

空港の社食で食事をしているとわざわざ前や隣に座ってお茶のグラスを倒して空の制服にお茶をかけてきた時には、一緒にいた美空が切れた。

「いい加減に子供みたいな嫌がらせ辞めたらどうですか、NOAのCAともあろう人達が恋人同士の中を妬んでお茶を駆けたり悪口を行ったり先日はどなたか足を引っかけてましたよね。空は運動神経がいいのでさっとよけてましたが、今回はさすがに見逃せませんよ。これから空はまだ業務があるんです。制服にお茶をかけるなんてNOAの社員として恥かしくないんですか」

と大声を上げたので、CA達はすごすごと逃げ出そうとしたら、彼女達の前に空の班の亜子ちゃんが立ちふさがった。

「人にお茶をぶっかけておいて、謝りもせずに逃げるんですか？もう一度新人研修からやり直したらどうですか？自分が悪い事をしたらまず相手に謝るのが一番にする事でしょう。こんな事小学生でも知ってますよ」

「あらあ、わざとじゃなくて、手が滑っちゃったのよ。ごめんなさいね。NOAのグランドスタッフなら制服の予備位ロッカーにあるでしょう。クリーニング代はお払いするわ」

そのCAは財布から一万円を出してお茶がこぼれたままの濡れたテーブルの上に置いて行こうとした。

空はここでぶちぎれた。

さっと立ち上がると、そのCAはビックっとして一歩引いた。それ程空の迫力がすごかったのだろう。

「こんなお金はいりません。それより野崎さんに伝えて下さい。自分では手を下さず人を使って嫌がらせをするなんてみっともない事してないで、堂々と私に言いにくればいいじゃないですか。最も隼人を譲ってくださいと土下座してもお譲りする気持ちはありませんけどね」

そう言うとCAの胸ポケットにお茶に濡れた一万円札をねじ込んだ。
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