俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
そして隼人は二十九歳という異例の速さで機長昇格の試験を受けることになった。NOAに入社する前のカナダでのコーパイとしての飛行経歴が役に立ったようだ。

NOAに入社して役2年半の事だった。

家にいてもずっと勉強しているのでかなりのレベルの試験なんだろうと思う空だが、極力その話題には触れずに、いつものようにおいしいご飯を作って隼人を癒していた。

空港でのスタンバイ勤務の時はお弁当を持たせると嬉しそうで、わんこなら尻尾をぶんぶん振っていそうな勢いだった。

そうして機長昇格試験はあとは実際に機長による乗務の実地試験のみとなり、これには自信があるようで意気揚々と出かけて行った。

隼人は無事に機長昇格試験に合格した。合格の知らせが届いたのは隼人の三十歳の誕生日の日だった。

今日はそのお祝いで健吾と美空も招いて家で食事をすることになっている。空は腕によりをかけて料理をした。美空が早く来て手伝ってくれたので大いに助かった。

美空もかなり料理の腕を上げたようだ。健吾が“いつも美味しい料理を作ってくれるんだ“と言って惚気ていた。

ちらし寿司に骨付きチキンの柔らか煮、ローストビーフ、カボチャの煮物、キュウリとじゃこの酢の物を用意した。

みんなはすご~い、さすが空、これ全部食べれるかなあなどと言っている。

四人で乾杯して、その日はみんな浴びるほどお酒を飲んだ。健吾は早々にダウンしてリビングのソファで眠ってしまった。

そこに隼人の携帯にカナダから電話がかかってきた。

隼人の家族から電話がかかってくるのは一緒に暮らし始めて初めての事だった。

隼人は寝室に行って話をしていたがかなり長い間話していて、寝室から出てきた時はすっかり酔いもさめたようで、深刻な顔をしていた。

「親父が倒れたそうだ」

とだけ言ってダイニングテーブルに座った。
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