俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
それを聞いて空は何も言えなかった。隼人はお父さんの事を聞いて本当はすぐにでも、飛んでいきたいだろう。でもそんな事もできない物理的な距離はどうしようもないのだ。

今そんな話をしてる場合ではない。手術の結果が気になるし今日は眠れないだろう。

隼人に先に風呂に入らせて、お母さんの連絡があるまで眠れなくても少し横になるように言って隼人を風呂場に追い立てた。

隼人は携帯を持って風呂に入った。

その後片付けをして空が風呂に入って二人してソファーに座り隼人のお母さんからの電話を待った。

隼人は空に明日は仕事があるんだから先に寝ていろと言ってくれたが、空も気になって眠れないからここで一緒に待ってると言って、隼人の隣に座ったのだ。

隼人は空の膝に頭を付けて“なら、こうしていよう。落ち着くんだ”と言って、膝枕をしてきた。

空は自分の膝の上の隼人の少し湿った髪の毛をドライヤーで乾かしてあげたり、高校生の頃の楽しい話や乗務の話、ゲートの失敗談などをお互い話しながら、電話を待っていた。

2時間ほどした時隼人の電話が鳴った。

隼人は飛び起きて電話に出た。

「母さん」というと、あとは話を聞いていて時々“ああ”とか“わかった”とか相槌をうっていた。

空はそっと席を外してキッチンで明日の朝ごはんの準備をしておくことにした。

三十分ほど話して隼人は電話を終えたようだ。“空“と呼ぶのでまたソファーの隼人の隣に座った。

「親父の手術は無事に終わって、成功したそうだ。搬送されたのが早かったことや出血部位の運がよかったこともあって後遺症も残らないと言う事らしい。でも、一カ月くらいは入院になるようだ。よかった。グランマの電話ではもうだめかもしれないと言う深刻な話だったんだ。肝が冷えたよ」

「ああ、よかった。でもお見舞いに帰らないといけないね」

「うん、母さんも一度帰って来て欲しいっていうから明日上司に相談してなるべく早く帰れるようにしたいと思っているんだ。それで、その時に空を両親にも、グランマにも会わせたいから一緒に行ってくれないか?」

「うん、わかった。隼人の帰る日が決まったら一緒に行けるようにする。バンクーバーだったよね」

「そうだ、本社も自宅もバンクーバーにある」

「多分明日の沖縄行のフライトは回避できないから、できれば明後日から休ませてもらおうと思ってる。空はそんな急にやすめるか?」

「うん、明日上司に相談する。有給はたっぷり残ってるから。明後日から2連休みだから何とかなると思う」

「そっか、なら一緒に行けそうだな。明日はっきりしたらフライト抑えるよ」

「フライトは私が抑えるよ。決まったらすぐに言って」
< 44 / 64 >

この作品をシェア

pagetop