俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
そんな事を話していると、中から上品そうな高齢のカナダ人女性が出て来て

「隼人、お帰り、待ってたのよ」

そう言うと隼人をハグして、空に目を向けた。

「そちらの方は?」と腑に落ちない声色で問いかけた。

「グランマ、僕の婚約者の空だよ」

「空、僕のグランマだ」

とても丁寧な話し方になっている。隼人にとってグランマはちょっと苦手な人なのだろうと理解した。

「初めまして、秋野空と申します。よろしくお願いします」

空は英語でしっかりと挨拶をして得意の美しいお辞儀をした。

「婚約者ってどういう事、あなたにはソーニャっていう婚約者がいるじゃない」

「何言ってるんだ、そんなのずっと前に話しが出た時に断っているだろう。僕の婚約者は空しかいないよ」

空は不穏な空気にどうしていいかわからなくなった。隼人には婚約者がいるのか…

「とにかくその人を家に入れるわけにはいきません。ソーニャに申し訳ないもの。市内のホテルに泊まってもらいなさい」

「そうか、わかったじゃあ僕も空と一緒にホテルに泊まるよ。親父の顔を見て二人に空を紹介したら日本に帰るよ」

「何言ってるの。こっちに帰って会社を継ぐ準備をするんじゃないの」

「何度同じことを蒸し返すんだ。四十五歳までは好きな事していいと言う話になったはずじゃないか」

「でも、洋二が倒れて事情が変わったわ。あなたはすぐにソーニャと結婚してソーニャのお父様の後押しを受けて社長になるべく会社に入って貰わないと…」

「とにかく親父とお袋に会って話してからだ。そんなつもりで帰ってきたわけじゃない。空行こう」

隼人は空の手を取って、乗ってきた車に乗り運転手に荷物もトランクに再度積み込んで市内のホテルに向かうように指示した。

おばあ様は、隼人にソーニャさんに挨拶して隼人はここに留まるように何度も言っていたが、隼人はそれを無視して運転手に車を出すように言った。

空はどうしたらいいかわからず、隼人の手をぎゅっと握りしめていた。隼人も空の手を離すもんかというように、握り返してくれた。

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