俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
空は同期で親友の東郷美空(とうごうみく)に電話して、よく行く居酒屋で四人での飲み会を提案して、そこで合流することにした。

そして今4人は居酒屋にいる。それぞれ好きなお酒をオーダーして、おいしそうな料理を前に乾杯するところだ。

「じゃあ、隼人の帰国とNOA(ノア)への就職祝いと美空とは初対面なのでこれからも4人仲良くやっていこうという事で乾杯!」

なんだか長い乾杯の挨拶だったが、健吾が楽しそうに音頭を取ってくれた。空と美空はレモンチューハイ、健吾と隼人はまずはビールと言ってあっという間に飲みほした。

「隼人も健吾も何かお腹に入れてからにしなさいよ。いつも言ってるでしょう。酔いが早く回るしすきっ腹に飲むと体に良くないよって」

「相変わらず空はおかんだなあ。人の事より自分もちゃんと食えよ」

と隼人はそういうと早々に次のビールのおかわりを頼んでいる。

空は小皿にサラダや煮物や焼き物をそれぞれ取り分けている。大学での空のあだ名は“世話やきおかん”だった。

「ほんと空はいつも気配りができるよね。空がいると安心する。班の飲み会でもいつも空はみんなの世話係で自分の事は後回しにして、会費の元なんか取れてないんだから、今日くらいは自分の好きに食べて飲みなさい」

「そうだ美空ちゃんの言うとおりだぞ。俺らにまで世話焼かなくていいんだからな」

そういう健吾はもう赤い顔をしている。この4人の中では多分一番お酒に弱い。

隼人は20歳になる前にカナダに行ってしまったから、その辺はよくわからないものの、顔色も変わらずケロっとしているところを見ると、強そうだ。

「そういえば、更衣室で誰かが言ってたんだけど、カナダからイケメンパイロットがやってきたって、CAなんかはもう浮足立ってるって言ってたわ。山根さんの事ですよね」

「イケメンかどうかはわからないけれど、カナダの航空会社から転職してきました。まだ1週間は引っ越しの荷物受け取って、住むところを整えたりしなければいけないんですけどね。それがすんだら出社してOJTを2カ月ほどやるみたいです」

「へえ~ 、隼人はどこに住むの?もう、決めてあるんでしょう?」

「お前のマンションの隣のマンションだよ。先月完成したばかりで気持ちいいぞ」

「なんで私のマンション知ってんのよ。健吾がちくったの?」

「人聞きの悪いこと言うなよ。空の住んでるマンションの5階には俺も住んでるんだからな」

「そういえばそうだった」

と言ってコロコロ笑っている空。
< 5 / 64 >

この作品をシェア

pagetop