俺様御曹司はパイロットになって愛しい彼女を迎えに来る
それを美空に言うと、二人の顔をじっと見て噴き出した。

「ほんと、それ言い得て妙だわ。若様に王子様ね」

と言って笑っていた。

「そういえば空や健吾がよく言う高校時代の仲良し3人組って隼人さんも入ってたんだ」

「そうだな、三人とも飛行機が好きでさ、空なんか飛行機を見ながら歩いてて側溝に落ちたり電信柱にぶつかって鼻を擦りむいたり、極め付きは蓋が開いてたマンホールに落ちそうになったことがあったよな」と健吾

「そうだったな、危なくて二人でハラハラしてたよな、その上おっちょこちょいでさ、バスなんかしょっちゅう間違えて乗って行くんだから、俺たちで自転車に乗って次の停留所まで追っかけて行って引きずり降ろしたよな?それでもまだわかってなくて、きょとん顔してるんだぜ、こいつ」

「何よ隼人、久しぶりに会ったのに喧嘩売ってんの」

「違うよ、高校生の時は俺と健吾がいなかったらお前絶対に大けがしてるって話」

なんか腑に落ちないなあと納得できない空。でも完全に否定はできない。

ある時横断歩道を渡りながら空を見あげると、飛行機雲を残しながら空を飛んでいく飛行機が…

めったに見られないその光景に横断歩道を渡っていることなんかすっぽりと頭から抜けて、道路のど真ん中で立ち止まってしまった空。

信号が変わり車のクラクションに、はっと我に返ったが動きが取れない空を走ってきて車に手を挙げて止めながら、隼人が空を引っ張って渡らせてくれたのだ。

隼人がいなかったらと思うとぞっとした。

きっと道路の真ん中で信号が変わるまで立ちすくんでしまっていただろう。

でも、何とか渡った横断歩道の先で空は慌てて携帯を取り出して、飛行機雲が広がって消えていかないうちに写真を撮ったのだ。
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