天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける
教室に入った瞬間、なるべく教室の端を歩いて、自分の席に着いた。
──後ろの席に彼が座っているかとかは、見ない。絶対に見ない。目が合う可能性があるとか無理。人生の終わりと言ってもいい。
あんな宣言された後に同じクラスとか、神様のイジメかな? それとも運命の皮肉?
……運命? いやいや、そんなドラマチックなものじゃない。多分ただの不運。
「白城さんだよね? 隣の席の影森です」
「えっ、あ、はい……よろしくお願いします……!」
必死に笑顔で応じながらも、視界の端に彼の存在を感じる気がして、思わず背筋を丸める。
見るな。見たら終わる。目が合ったら石になる。
自分に言い聞かせながら、思った。まるで現代のメドゥーサみたいだ、と。
……それにしても、なんで急にケンカを売られたみたいになったんだろう。
勝手に図書室に入ったから? でも、入室禁止って書いてなかったし……。
ほんの少しだけ、気になってしまう自分がいた。
この気持ちが、気まずいだけなのか、それとも違う気持ちなのかはわからない。
それに、昨日の胸の痛みにも気になる……。
いやいやいやいや、だとしてもダメ! 気になったら関わるフラグ!
──なのに。
気配が近づいてくる。背中に刺さるような視線。空気が変わる。
まさか……まさか──
冷や汗が流れる。
「……お前、ほんとに俺を無視する気か?」
低く、聞き覚えのある声が背後からした。
(ぎゃああああああああああ!!!! 『関わるな』じゃなかったの!?)
心の中で叫んだ。外には出さない。絶対に。
──私の、平凡な学園生活、まだ一歩も始まってない。