天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける
『お兄さんたちとさ、遊ぼうよ』
『い、いやです』
『怯えてるじゃん。かわいそうー』
ゲラゲラと笑いながら、連れ去られそうになった、あの日の記憶がフラッシュバックした。
「っ」
あの時は、お兄ちゃんたちが助けてくれたけど、今は誰もいない。
自分しか頼れない。
息が詰まりそう。震えそうになる自分を、必死で押し殺す。
「や、やめてください……」
声が震えてしまう。
……帰りたい。ここから、早く離れたいのに。
「いいじゃんか、減るもんでもないし、笑ってみてよ?」
手が、そっと沙音の肩に向かって来た。
(肩に触れるっ……)
思わず身構えた。
その時、背後から低く鋭い声が響いた。
「うるせぇ、そこから離れろ。邪魔だ」
振り返ると、神牙さんが立っている。
彼の瞳は夜の闇よりも深くて、冷たく光っていた。
怖いはずなのに、不思議と守られている気がして、胸が少しだけ落ち着く。
「……聞こえなかったか? ああ、もしかして、一度ヴァンパイアの礼儀やらを教えた方がいいか?」
「い、いえ、だ、大丈夫です!!」
「す、すみませんでした!!」
男子たちが一瞬で怯えて逃げていくのを見て、私は声も出ずに見送った。
神牙さんは無表情で、でも、その口調は強気で、俺様って感じだけど……
「……ったく、なんでそんなにビビってんだよ。俺がついてんだから、安心しろって」
空気を和ませようとしてくるのが伝わってくる。
その言葉に、不思議と気まずさも消え去り、胸のざわつきが少しだけ静まる気がした。