天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける
「えっ、い、いいよ、自分で帰れるし……」
「は? さっきまで泣きそうだったくせに何言ってんだ」
「うっ……!」
(反論できない!!)
そんなふうに軽口を叩いてくるくせに、神牙さんは私の歩幅にちゃんと合わせてくれている。
放課後の風は少し冷たかったけど、心の中はあたたかかった。
嫌なことしかないと思っていた学校も、少しだけ──ほんの少しだけ、変わって見えた。
そっと顔を上げて、神牙さんの横顔を見た。
無表情だけど、まつげの影が優しく見えた。
「……神牙さんって、怖い人だと思ってた」
「は? 何だよ、いきなり」
「いや、だって、初対面の人に『俺に関わるな』って言う人だよ?」
神牙さんは何かを言おうとしてたみたいだけど、勇気がまだあるうちに言っとこうと思って、口を開く。
「でも……今日のことで、本当は、違うのかもしれないって思った」
神牙さんは返事をせずに、ただ少しだけ目を細めて空を見上げた。
「……俺のこと、簡単に信じない方がいい」
「……え?」
「そのうち、嫌でも知ることになる」
そう言った神牙さんの瞳は、どこか遠くを見つめていて──
私は、その言葉の意味が、わからないまま立ち尽くしていた。
「……彼女を守れなかった、ただの罪滅ぼし、みたいなもんだからな……」
最後の言葉は聞こえなかったけど、遠くを見つめていた神牙さんの瞳が悲しげな色をしていて、聞くことができなかった。