彰人さんが彼女にだけ優しい理由
 しかし、目の前のノートパソコンの画面をバタッと折りたたんだ彼女に、流石(さすが)にキレた。

「もう!何?!」

 大声を上げた私に、周囲の5人ほどの同僚達がこちらを振り返った。
 しー、と詩織は唇に人差し指を当て、顔をしかめる。大きな溜め息を吐いた私の横で、彼女は椅子の足をコロコロとスライドさせながら近寄ってきた。
 眉根を寄せ、顔をしかめた私に、すぐ傍まで寄ってくると、耳打ちする。

「今日!人数足りないのよ、奈月ぃお願い!」

 その台詞で全てを悟ると、私はゲンナリと視線を宙に上げる。溜息混じりに返事を返す。

「私、合コンには出ないっていつも言ってるじゃん」

 するとアンタさぁ、と今度は彼女の方が溜め息を吐いた。

「その年になって彼氏いない暦9年て…その内、干物になるわよ?」
「ひ…干物?」
「そう!」

 詩織は呆れたとばかりに首を振った。

「高校2年で最後なんでしょ?彼氏」
「……」
「26歳で9年も恋愛ご無沙汰だなんて…どんだけ恐ろしい悲劇よ」
「悲劇って…」
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