コンビニからはじまる最後の恋
「では、改めてアイデアを練って絵コンテを提出させてください。御社のご希望やコンセプトはそのままで、私がイメージするCM内容で提案させていただけますか?」
「ああ、もちろん。期待してますよ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、宮本くん、あとはよろしく」
「はい」

……パタン。

部長たちと広報課の担当者が退室し、ドアが閉じる。

「結川さん、本当に申し訳ありません。5本も提案してくださったのに……」
「宮本さんが気にすることはないですよ。クリエイティブには修正や全ボツはあることですし、率直なご意見を伺うことで本当にほしい表現がしぼられてきますから」
「そう仰ってくださると助かります」

真摯に向き合ってきたからこそ、アワード大賞を何度も受賞できたんだと思う。
もちろん、センスや本人のたゆまぬ努力もあるけれど。


打合せが終わり、結川さんがPCを片付けるのを待つ間。

「あの、この前のこと、覚えてますか?」
「覚えてますよ。でも仕事で合うのはノーカウントです」
「そんな……」

リュックを背負った結川さんが、にこっと微笑む。

「少しは思い出そうとしてくれましたか?」
「しましたけど、ごめんなさい。いつどこでお会いしたか思い出せないんです」
「じゃあ、ヒント。もう何年も前に会ってますよ」
「え、いつだろう……」
「では社に戻ってアイデア練りますね。よろしくお願いします」
「ヒントそれだけですか? 何年前とかあれば思い出せそうです」
「それだと答えを言ってるようなものですし」

(それはそうなんだけど……範囲が広すぎる……)

「宮本さん」

(ち、近い……! )

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