コンビニからはじまる最後の恋
昼間のことを思い出すと鼓動が騒ぎ出しそうで、
私は軽く咳払いをして結川さんににこりと微笑んだ。


「結川さん、お疲れ様です。今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます」

軽く挨拶を交わすと、結川さんが店内を見回す。

「久しぶりにこの時間に来ましたけど、客層が変わると新鮮ですね」
「私も同じこと考えてました。それに、学生さんが多いと昔を思い出します」
「昔って……高校時代とか?」
「そうです。サッカー部のマネージャーしてたんですよ。……懐かしいです」
「懐かしいって思えるのは、いい思い出だったってことですよね」
「……」

ズキンと音を立てて胸が痛む。

「宮本さん?」
「え? あ、いい思い出! そうなんです! いい思い出だなって浸ってました!」
「……」
「マネージャー3人いたんですけど、私だけ未経験だったから雑用係で。ドリンクとか毎回買い出ししてたんで大変でしたけど」

(そんな私をいつも手伝ってくれた1年生がいたっけ)
(誰だったかな。有名なサッカー選手と同じ名前だった気がする)

「そういえば、思い出しましたか? 僕のこと」
「それが……すみません、検討がつかなくて」


──次に会ったときに教えますよ。
──でも仕事で合うのはノーカウントです。


「まさか今もノーカン……?」
「プライベートです。約束したから教えますよ」
「よかった……! 思い出せなくてモヤモヤしていたんです」
「それじゃあ、ちょっと付き合ってもらえませんか?」
「……?」


その数分後──

私は結川さんが運転する車の助手席にいた。
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