コンビニからはじまる最後の恋
──夏葉先輩、俺も買い出し手伝いますよ。重い荷物運ぶの大変ですよね。
──あ、俺もボール拭きやりますよ。俺、下手だからそんなに蹴らせてもらえないし。


思い出が瞬時によみがえる。
彼があの時の1年生部員だったとは……。


「いつ、気づいたの?」
「レジに拒否られてる時」
「うっ……!」
「焦ってる横顔に見覚えあるなって思ったら、夏葉先輩だって気がついて」
「恥ずかしい……すぐ教えてくれればよかったのに」
「俺のこと見ても初対面対応だったから。だから、偶然でも会えて嬉しい想いだけでよかったんです。でも、CM制作の顔合わせでもう一度先輩に会って、思ったんです」
「何を?」

「……また諦めるのは嫌だって」
「え……それってどういう意味……?」
「……俺……」

そこまで言って、キュッと口を引き結ぶ。
ハンドルを握る指先が、さっきから落ち着かない。
握って、ほどいて、また握る。

なんだか言いたい言葉を飲み込んでいるように見える。

ふいに結川さんが私をみつめた。

「俺……ずっと先輩が好きでした。キャプテンと付き合ってることは知ってたけど、好きな気持ちはとめられなくて」
「……!」

プップー!

クラクションのけたたましい音が鳴り響いてハッとする。
いつの間にか信号が青に変わっていた。

ゆっくりと車が走り出す。
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