コンビニからはじまる最後の恋
Story 2
「癒し系彼氏かぁ~羨ましい! お礼に今度ご馳走させてくださいって連絡先聞いちゃえばよかったのに」

翌日。
同僚の相川琴音とランチを食べながら昨夜の出来事を話すと、彼女はもどかしそうな表情でそう口にした。

ここは大手自動車メーカーの自社ビル。
私と琴音は企画推進部で、販売促進のためのキャンペーンやプロジェクトを企画・実行している。
担当するプロジェクトは異なるが、時間が合えばこうして一緒にランチをしている。

「出会いのチャンスだったのにもったいない」

社食のハンバーグ定食ごはん大盛りをモリモリ食べながら琴音が続ける。
細い身体にどうしてそんなに食べられるのか不思議だが、太らない体質に加えホットヨガやボクササイズで綺麗を維持している。
自他共に認める肉食系で彼氏が途切れたことがない。

「いや無理無理。代金返すことしか考えてなかったし。それに帰る方向同じでストーカー疑われかけたから、食事に誘うなんてできないよ」
「偶然同じ方向って、運命じゃない?」
「琴音のポジティブシンキングが羨ましいよ」
「私だって引きずることあったけどさ。立ち止まったらそこで終わりでしょ?」

琴音が学生時代に経験した大失恋から得た教訓で、肉食系女子として開花したきっかけでもある、らしい。
詳しくは聞いていないが、価値観が大きく変わるほどの大失恋のようだった。

「夏葉」

食事の手を止めて琴音が真面目な顔で見つめてくる。

「元カレのこと、ふっきらないと次に進めないよ?」

その一言で胸の奥がズキンと痛む。

元カレ──秋山尚貴──は高校時代の先輩だ。
サッカー部のマネージャーをしていた私は、エースフォワードでキャプテンだった秋山先輩から告白され、付き合っていた。

初恋で……初めての相手だった。

ケンカもしたし別れの危機もあったけど、社会人になっても交際は続きこのまま結婚するのかと思っていた。
でも──
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