双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4
ロベールとマルセルは、ぱあっと顔を輝かせた。
「はい!」
「母上もいっしょです!」
とてもかわいいその様子に心奪われていたら、ドゥードゥー先生が再び私に質問する。
「王妃殿下、先ほどの答え、当然わかりますよね?」
挑発的な口調だが、これは私に花を持たせてくれているのだ。王子たちに私の知識を披露する機会を与えるために。
ドゥードゥー先生の配慮をありがたく思いながら、胸を張って答える。
「魔力を帯びているのに、魔法を使えない生物、それは魔草です」
ロベールとマルセルが目を丸くした。
「まそう!」
「まそうがまじゅうのなかま?」
私はふたりに頷きながら、説明する。
「同じところがあると言えるわね。だけど、もちろん違うところもあるわ。魔草は魔獣と違って動くことができないし、人間に危害を加えることもないでしょう?」
ロベールとマルセルは感心したように頷いた。きっと、いつも温室で見ている魔草を思い出しているのだろう。
一見地味なのに不思議とこちらを警戒させる、魔力を帯びた草、それが魔草だ。
葉の表面から取り込んだ魔力を、露のような半透明のキラキラした形で放出する。乳白色で丸いその形から、私はそれをぺルルと名付けた。真珠(ぺルル)に似ているからだったが、いつの間にか王立植物園に認められた正式名称となった。
飽和するまで魔力を吸ったペルルは、触れるとシャボン玉のように弾けて消える。だが、魔力がなく魔法が使えないマルセルだけがそれをつまめるのだ。おそらくそれがマルセルの特殊能力のひとつなのだが、それだけではない。
マルセルが魔草に『お願い』すると、ペルルに関した品種改良を行うことができる。
その結果、特大ペルルを発生させる新種の魔草をマルセルは生み出した。
そして、この特大ペルルが魔獣退治に大活躍している。
魔力を欲して人里に下りる魔獣の習性を利用して、山奥に留め置くようにしたのだ。撒き餌にされた特大ペルルがある間は、魔獣の行動範囲を管理できていると報告があった。
ドゥードゥー先生が魔草に興味を持ってくださったのも、その流れからだ。
『武のドゥルセ』と協力すれば、魔獣の被害をさらに減らすことができるかもしれない。
そう思った私は、マルセルの特殊能力を隠して、情報交換に同意した。
王子たちが学ぶ様子を堂々と見られるご褒美付きなのは、正直、とっても嬉しい。
「魔獣についてはドゥードゥー先生が詳しいから、きちんとお話を聞いてね」
私が言うと、ふたりとも元気よく手を挙げる。
「はい! わたし、ちゃんと聞きます!」
「わたしも聞きます! まじゅう、おもしろいです」
――知的好奇心旺盛……! さすがだわ……!
ほくほくしている私に向かって、ドゥードゥー先生はニヤッと笑った。
「そう……魔獣は非常におもしろいです」
「はい!」
ロベールがまた小さく跳ねる。大好きな先生と同じ意見で嬉しいのだろう。
だが、マルセルは困ったように首を傾げていた。
「でも、まじゅう、わるいことしますよ……?」
私は思わずしゃがみ込んで、目線を合わせる。マルセルの戸惑ったような青い瞳を受け止めながら、口を開いた。
「そうね、それは確かにそう。マルセルの言う通り、魔獣が悪さをしたせいで悲しい思いをした人たちはたくさんいるわね」
魔獣によって命を落とした方はたくさんいる。
四方を山に囲まれたこの国の歴史は、魔獣との戦いの――喪失と悲しみの歴史だった。
我が国の呪文が他国に比べて短いのは、魔獣に襲われた時に間に合うように工夫した結果だと言われている。
髪色重視の魔法体系が発達したのも、自分に適した魔法を磨くことで、魔獣から身を守ろうとしてきたからかもしれない。
しかし。
時代が下るに従って、髪色と属性魔法のズレに悩む人が増えてきたのも事実だった。魔獣の習性の研究も進み、身を守る術も増えている。
そこでルイゾン様は、髪色にこだわらない国造りに踏み切った。歴代の黒髪の主が特殊能力を悪用したため、いまだに忌み嫌われている黒髪を含めてだ。
もちろんそれは、銀髪で生まれてきた王子たちの即位に繋げるためでもある。
王になるのはどちらかひとりだとしても。
――だけど、目の前の王子たちがそこまで知るのは早すぎる。
私はマルセルを安心させるように、穏やかな口調で続けた。
「父上や騎士団の皆様は、一生懸命頑張って、皆を魔獣から守ってくれているの」
澄んだ青い瞳が深みを増す。
「いっしょうけんめい……」
「まもってくれている……」
ロベールが一歩前に出て、ドゥードゥー先生に尋ねた。
「先生、まじゅうをやっつけるまほうはないんですか?」
ドゥードゥー先生は首を横に振る。
「ロベール様、魔獣は魔法との相性が悪いんです。ですから、どちらかと言うと逃げるために魔法を使った方がいいですね」
「あいしょうがわるい?」
ドゥードゥー先生は、ロベールとマルセルふたりに向かって言った。
「ペルルが魔獣の撒き餌になることからわかるように、魔獣には魔力を吸い取る能力があります。ですから、攻撃魔法を放っても、十分な威力を発揮できないことがほとんどなのです」
ロベールが驚いたように繰り返す。
「はっきできないんですか!」
マルセルも隣で目を見開いていた。
ドゥードゥー先生は頷く。
「国王陛下のように、魔法で隙をついてから剣でトドメを刺すのが、今考えられている理想的な魔獣の仕留め方です。陛下の腕は素晴らしいですよ」
――さすがルイゾン様だわ。
鍛錬を一日も怠ったことのないルイゾン様の逞しい胸を思い出して、私は内心で拍手した。
「はい!」
「母上もいっしょです!」
とてもかわいいその様子に心奪われていたら、ドゥードゥー先生が再び私に質問する。
「王妃殿下、先ほどの答え、当然わかりますよね?」
挑発的な口調だが、これは私に花を持たせてくれているのだ。王子たちに私の知識を披露する機会を与えるために。
ドゥードゥー先生の配慮をありがたく思いながら、胸を張って答える。
「魔力を帯びているのに、魔法を使えない生物、それは魔草です」
ロベールとマルセルが目を丸くした。
「まそう!」
「まそうがまじゅうのなかま?」
私はふたりに頷きながら、説明する。
「同じところがあると言えるわね。だけど、もちろん違うところもあるわ。魔草は魔獣と違って動くことができないし、人間に危害を加えることもないでしょう?」
ロベールとマルセルは感心したように頷いた。きっと、いつも温室で見ている魔草を思い出しているのだろう。
一見地味なのに不思議とこちらを警戒させる、魔力を帯びた草、それが魔草だ。
葉の表面から取り込んだ魔力を、露のような半透明のキラキラした形で放出する。乳白色で丸いその形から、私はそれをぺルルと名付けた。真珠(ぺルル)に似ているからだったが、いつの間にか王立植物園に認められた正式名称となった。
飽和するまで魔力を吸ったペルルは、触れるとシャボン玉のように弾けて消える。だが、魔力がなく魔法が使えないマルセルだけがそれをつまめるのだ。おそらくそれがマルセルの特殊能力のひとつなのだが、それだけではない。
マルセルが魔草に『お願い』すると、ペルルに関した品種改良を行うことができる。
その結果、特大ペルルを発生させる新種の魔草をマルセルは生み出した。
そして、この特大ペルルが魔獣退治に大活躍している。
魔力を欲して人里に下りる魔獣の習性を利用して、山奥に留め置くようにしたのだ。撒き餌にされた特大ペルルがある間は、魔獣の行動範囲を管理できていると報告があった。
ドゥードゥー先生が魔草に興味を持ってくださったのも、その流れからだ。
『武のドゥルセ』と協力すれば、魔獣の被害をさらに減らすことができるかもしれない。
そう思った私は、マルセルの特殊能力を隠して、情報交換に同意した。
王子たちが学ぶ様子を堂々と見られるご褒美付きなのは、正直、とっても嬉しい。
「魔獣についてはドゥードゥー先生が詳しいから、きちんとお話を聞いてね」
私が言うと、ふたりとも元気よく手を挙げる。
「はい! わたし、ちゃんと聞きます!」
「わたしも聞きます! まじゅう、おもしろいです」
――知的好奇心旺盛……! さすがだわ……!
ほくほくしている私に向かって、ドゥードゥー先生はニヤッと笑った。
「そう……魔獣は非常におもしろいです」
「はい!」
ロベールがまた小さく跳ねる。大好きな先生と同じ意見で嬉しいのだろう。
だが、マルセルは困ったように首を傾げていた。
「でも、まじゅう、わるいことしますよ……?」
私は思わずしゃがみ込んで、目線を合わせる。マルセルの戸惑ったような青い瞳を受け止めながら、口を開いた。
「そうね、それは確かにそう。マルセルの言う通り、魔獣が悪さをしたせいで悲しい思いをした人たちはたくさんいるわね」
魔獣によって命を落とした方はたくさんいる。
四方を山に囲まれたこの国の歴史は、魔獣との戦いの――喪失と悲しみの歴史だった。
我が国の呪文が他国に比べて短いのは、魔獣に襲われた時に間に合うように工夫した結果だと言われている。
髪色重視の魔法体系が発達したのも、自分に適した魔法を磨くことで、魔獣から身を守ろうとしてきたからかもしれない。
しかし。
時代が下るに従って、髪色と属性魔法のズレに悩む人が増えてきたのも事実だった。魔獣の習性の研究も進み、身を守る術も増えている。
そこでルイゾン様は、髪色にこだわらない国造りに踏み切った。歴代の黒髪の主が特殊能力を悪用したため、いまだに忌み嫌われている黒髪を含めてだ。
もちろんそれは、銀髪で生まれてきた王子たちの即位に繋げるためでもある。
王になるのはどちらかひとりだとしても。
――だけど、目の前の王子たちがそこまで知るのは早すぎる。
私はマルセルを安心させるように、穏やかな口調で続けた。
「父上や騎士団の皆様は、一生懸命頑張って、皆を魔獣から守ってくれているの」
澄んだ青い瞳が深みを増す。
「いっしょうけんめい……」
「まもってくれている……」
ロベールが一歩前に出て、ドゥードゥー先生に尋ねた。
「先生、まじゅうをやっつけるまほうはないんですか?」
ドゥードゥー先生は首を横に振る。
「ロベール様、魔獣は魔法との相性が悪いんです。ですから、どちらかと言うと逃げるために魔法を使った方がいいですね」
「あいしょうがわるい?」
ドゥードゥー先生は、ロベールとマルセルふたりに向かって言った。
「ペルルが魔獣の撒き餌になることからわかるように、魔獣には魔力を吸い取る能力があります。ですから、攻撃魔法を放っても、十分な威力を発揮できないことがほとんどなのです」
ロベールが驚いたように繰り返す。
「はっきできないんですか!」
マルセルも隣で目を見開いていた。
ドゥードゥー先生は頷く。
「国王陛下のように、魔法で隙をついてから剣でトドメを刺すのが、今考えられている理想的な魔獣の仕留め方です。陛下の腕は素晴らしいですよ」
――さすがルイゾン様だわ。
鍛錬を一日も怠ったことのないルイゾン様の逞しい胸を思い出して、私は内心で拍手した。