双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4
ドゥードゥー先生はふっと笑って付け足す。
「まあ、私の実家は筋肉馬鹿が多いので、最初から剣でトドメを刺そうとしますけど」
身内ならではの『武のドゥルセ』の例え方に吹き出しそうになった。
ロベールとマルセルは感心したように呟くばかりだ。
「まほうでよわらせる……」
「けんでとどめ……」
ドゥードゥー先生が木漏れ日に目を向けた。
「お世辞ではなく、国王陛下は国一番の剣の使い手でしょうね。さまざまな魔法を巧みに組み合わせる臨機応変さもですが、ここぞという時に振るう剣に迷いがないのが素晴らしいと、父も申していました」
初めて聞く話に、私は思わず口を挟む。
「まあ、ドゥルセ辺境伯がそんなことを?」
「はい。何度かご一緒したことがあるらしく、父は酒が入るとその話をします」
――さすがすぎるわ。もうさすがしか言えない。
お怪我がないようにと祈ってしまうけれど、誰よりもルイゾン様が強いと聞くと、やはり誇らしい気持ちになる。
――お飾りだけど……王妃だからそれくらいは思ってもいいわよね……?
少し考えた後、私は立ち上がってドゥードゥー先生にお礼を述べた。
「ありがとうございます」
ドゥードゥー先生はまたニヤッと笑う。
「なんのお礼か伺っても?」
「もちろん、ルイゾン様を褒めてくださったお礼ですわ」
「なるほど……」
ドゥードゥー先生は私の後ろに向かって声をあげた。
「だそうですよ、陛下」
――陛下!?
慌てて振り向くと、確かにルイゾン様がそこに立っている。
「このタイミングで明かすとは意地が悪いな」
「むしろ最高のお膳立てのつもりでしたが」
――待って? いつから? 聞かれていた? どれを? 全部? おかしなことは言ってなかったかしら!?
動揺して言葉を失う私の代わりに、ロベールとマルセルがはしゃいだ声を出した。
「父上!」
「父上もこうぎうけますか!?」
ルイゾン様はふたりに優しい眼差しを向ける。
「いや、ちょっと様子を見に来ただけだ」
その横顔を見た私は、ああ、ダメだと思う。
――ダメだ。好きすぎてダメだ。
会えると思っていなかったところで、顔が見れた。
それだけのことがこんなにも嬉しい。
木漏れ日を受けてキラキラと輝く、『王族の金髪』。青空のような青い瞳と、意志の強そうな眉。キリッとした口元に、精悍な体つき。
見惚れてしまうのも無理はない容姿なのだが、ただ整っているだけではこんなに苦しくならない。ルイゾン様だからそれらの造形が意味を持って、私の鼓動を激しく動かすのだ。
――人を好きになるってこんなに忙しいものなのね。
恋心を自覚して以来、私の内面はいつも大騒ぎだった。
――大丈夫、落ち着くのよ。深呼吸。深呼吸。
ルイゾン様の視界に入らないように注意しながら、平常心を取り戻す努力をしていると、ドゥードゥー先生とルイゾン様の会話が耳に入る。
「合格ですか?」
親しみを込めたその言い方に、ルイゾン様は苦笑したように答えた。
「試したつもりはない。本当に様子を見に来ただけだ」
ドゥードゥー先生は、なぜか私を見ながら付け足す。
「いいえ、家庭教師としてではなくですよ」
よくわからないがさっきの魔草の講義のことだろうか。
ルイゾン様が肩を竦める。
「……なるほど、ドゥルセ辺境伯が、末っ子の三男には手を焼くと言っていた意味がわかるよ」
「あの人たちは単純すぎるんです。陛下はもちろんそんなことありませんよね」
ルイゾン様の懐にするりと飛び込むドゥードゥー先生の人懐こさに、思わず感心した。ともすれば失礼だと思われそうな態度も、ド
ゥードゥー先生だと受け入れられているのだ。
――ドゥードゥー先生の魅力は、メイドたちだけでなくルイゾン様も虜にするのかしら?
そんなことを考えていると、ルイゾン様がいきなり振り返る。
「ジュリア、なにか不穏なことを考えていないか?」
「いえ、どちらかと言うと真面目なことです」
「それならいいが」
再び前を向こうとしたルイゾン様に慌てて尋ねる。
「と言いますか、今、私、声に出していましたか?」
「いや、しきりに後ろで頷く気配がしていたので、なにかを勘違いして納得しているのではないかと思ったんだ」
「なるほどです……」
ルイゾン様は、目を細めて笑う。
「心配しなくても、わかることしかわからない。残念ながらね」
それはつまり、ルイゾン様も私について知りたいことがあるということだろうか。
追求したい衝動に駆られたが、ロベールとマルセルたちが大人たちの会話を終わるのを行儀よく待っている様子が目に入った。
「ルイゾン様、せっかくですからロベールとマルセルの成長ぶりをご覧になってください」
そう促すと、ドゥードゥー先生も頷く。
「そうですね。殿下たちも陛下に成果をお見せしたいですね。ではロベール様は風魔法を、マルセル様はロベール様が発動させた魔法について知っていることを話してください」
ルイゾン様が優しく笑った。
「ほう、そんなことがもうできるのか」
ロベールとマルセルは飛び跳ねんばかりの勢いだ。
「はい! わたし、がんばります」
「わたしもがんばります!」