双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4
 ドゥードゥー先生が中庭の少し開けたところを指す。

「それではロベール様、あちらの広いところでまずは初歩魔法四種をお願いします」

「はい」

 ロベールは背筋をピンと伸ばして木々のない場所に移動した。

 両足を肩幅ほどに広げ、小さな手をキュッと握りしめる。

 離れていてもわかるくらい気合いの入った目をして、大きく息を吸った。

 まずは両手を地面にかざす。

「ヌシュ(直れ)」

 落ち着いた、いい呪文だった。

 過不足なく魔力をコントロールしている。

 ロベールから少し離れたところにあった土の塊がふわりと盛り上がり、さっと平らな形になった。

 これくらいは当たり前だと言わんばかりに、ロベールはいつもと同じ様子で立っている。

 ドゥードゥー先生がマルセルに尋ねた。

「マルセル様、今のは?」

 だが、その代わりと言っていいくらい、マルセルが目を輝かせている。自分が魔法の発動に成功したかのように、誇らしげに答えた。

「ヌシュは土まほうのしょほです! かんたんそうに見えて、あんなにきれいにたいらにするのはむずかしいといわれています」

 ドゥードゥー先生が小さく頷く。

「その通りです。では、ロベール様、次を」

 促されたロベールは、今度は両手を空に掲げた。

「ヴィー(水)」

 ロベールが伸ばした手の、少し先の辺りの空気が震えたかと思うと――。

 ばしゃん!

 震えた空気がボールのように丸く固まり、瞬きする間もなく水に変わって、地面に落ちた。

 ドゥードゥー先生は、ロベールから目を離さずに口を開く。

「マルセル様、今のは」

 マルセルは青い瞳をさらに輝かせた。

「ヴィーは、水まほうのしょほです! なにもないところに水をつくるのは、てきせいがひつようです」

「その通りです。ロベール様は見事に水を出現させましたね」

「はい! 見事です」

 胸を張るマルセルもロベールから目を離さない。

 ルイゾン様の様子をチラリとうかがうと、誇らしさと愛しさが混ざったような表情をしていた。私も多分、それに近い顔をしていたと思う。

 胸がいっぱいで、ただただ見守ることしかできない。

「それではロベール様、次をお願いします」

 ドゥードゥー先生の声に、ロベールの掲げた両手が弧を描いた。

「ラフィー(風)」

 ロベールの両手の動きに空気がついてくるのがわかる。威力は大きくないが、ロベール自身の前髪をふわりと持ち上げた。

「あれはラフィー、風まほうですっ」

 マルセルが促される前に説明する。

「しょほであり、キホンでもあります! ロベールはかんぺきだってドゥードゥー先生がいってました!」

「その通りです。ロベール様はどれも基本がきっちりできています。将来が楽しみですね」

 その言葉に大きく頷いたのはマルセルだった。

「はい! たのしみです!」

 私とルイゾン様は顔を見合わせて思わず微笑む。

 ドゥードゥー先生は穏やかに付け加えた。

「それではロベール様、最後の魔法をお願いします」

 ロベールは、頭上でグルグル回していた手を下ろす。両方の手のひらを上に向けて、ピンと指先を伸ばした。

 ロベールの集中が高まっているのが全身から伝わってくる。

 絞り出すような声で、ゆっくりと唱えた。

「……フー(炎)」

 小さな指先に、蝋(ろう)燭(そく)の炎ほどの控えめな火が灯る。

 これほど続けて魔法を発動させてきたのだ。そろそろ体力も魔力も限界だろう。遠目からでもわかるくらい、ロベールの額は汗ばんでいた。

 それでも、ロベールは自分の指先から目を離さず、もう一度呟いた。

「フー!」

 一瞬だったが、ロベールの指先の炎がボワッと大きくなる。

「ロベール、すごい!」

 真っ先に叫んだのはやはりマルセルだ。

「ちいさな火からおおきな火をつくるのは、むずかしいです! ロベール、がんばりました!」

「そうですね。練習よりもうまくできている。ご両親が見ていてくださっているからでしょう」

 ドゥードゥー先生は小さく拍手して、ロベールをねぎらった。

「お疲れ様でした。ロベール様。さあ、こちらへ」 皆のいる場所に戻ってきたロベールは、額の汗を手で拭いながらルイゾン様を見上げる。

「父上、みていてくれましたか……?」
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