双子王子の継母になりまして ~嫌われ悪女ですが、そんなことより義息子たちが可愛すぎて困ります~4
ロベールとマルセルは不思議そうに首を傾げた。
「たのしむ?」
「たのしんでいいんですか?」
ドゥードゥー先生はニッコリと笑う。
「いいに決まってます。そうでないと、こんな体力も気力も使うもの、やってられませんよ」
ルイゾン様も同意した。
「その通りだ。ロベール、マルセル」
ふたりは見上げるようにして、ルイゾン様に問いかける。
「父上もたのしんでますか?」
「まほう、たのしいですか?」
「ああ。ここだけの話、魔獣にうまく魔法をかけられた時は心の中で叫んでいる。よしってな」
ロベールとマルセルはお互いを見て笑い合った。魔獣に魔法をかけるルイゾン様を想像しているのだろう。
――魔法を楽しむ。
正直、私にもその考えはなかった。思わず呟く。
「楽しんではいけないと思っていました」
人より魔力が多い私は、亡くなったソフィアお母様から魔法が使えることを隠すように言われて育った。継母となり、人々の前で魔法を使うようになってからも、ふとソフィアお母様を思い出すことがある。そのたびに、これは必要な魔法だからと自分に言い聞かせて使っていたのだが、そんな私にとって魔法を楽しむという発想は新境地だった。
ドゥードゥー先生は立ち上がって答える。
「もちろん、人を傷つける魔法はダメです。それは法でも禁止されていますよね」
ルイゾン様が頷いた。
「その通りだ。魔法でもそれ以外の方法でも、人を傷つけるとこの国では罰せられる」
木漏れ日がルイゾン様とドゥードゥー先生に降り注ぐ。
ドゥードゥー先生は、少し明るく透けたワインレッドの髪を揺らした。
「だけど、できないことができるようになるのは楽しいでしょう? それと同じように、魔法を使うのも楽しんでいいと思うんです。そこからまた新しいなにかが生まれるはずですから」
そうか、と思った私は呟く。
思えば、最初。家族に隠れてこっそりと本を読んで魔法を使っていたあの頃。できなかった魔法を少しずつ、習得していったあの頃。
確かに、魔法を使うことが楽しいと思う瞬間があった。心の奥底にしまいすぎて忘れていたけれど。
私は顔を上げてドゥードゥー先生に言う。
「今からでも楽しめるでしょうか」
「もちろんです」
ロベールがすかさず叫んだ。
「わたしもたのしみたいです!」
「わたしは……」
言葉を呑み込むマルセルを、ドゥードゥー先生が素早く励ます。
「マルセル様も楽しんでください」
「でも……わたし」
いつの間にか魔力が満ちていたロベールと違い、マルセルは魔力なしのままだ。そのことに引け目を感じていることもわかっていた。
だけどドゥードゥー先生は優しく促す。
「さっき、ロベール様の魔法を説明するの、楽しかったでしょう?」
マルセルは遠慮がちな声を出した。
「はい。でもあれはロベールのまほうだから」
「それでいいんです。私も体が弱くて、剣が苦手だった。それで魔法学にのめり込んだんですが、結果的に兄たちが剣を振るって魔獣を倒す時の助けになりました。なんでも巡り巡るんです。目の前のことを真っ当に楽しんでいれば」
「めぐる……」
マルセルがためらったように繰り返すのを見て、ロベールが小さな手をギュッと握って力説する。
「マルセルはすごいよ! わたしはあんなにまほうのしゅるい、おぼえられない。わたしよりもさきに、じゅもんおぼえている」
マルセルが戸惑ったように答えた。
「それはだって、おもしろいからおぼえていただけで」
ドゥードゥー先生がふたりに向かって小さく拍手する。
「そう。そういうことです。それでいいんですよ」
胸がいっぱいになりながらその様子を見守っていた私の肩を、ルイゾン様がそっと抱いた。
不思議なことにその時ばかりは挙動不審にならず、ふたりでロベールとマルセルを見守ることができた。
きっと、ルイゾン様も同じ気持ちだとわかっていたからかもしれない。
――どんな形でもいい。ロベールとマルセルが健やかに、楽しみながら成長しますように。
木漏れ日がふたりの銀髪にキラキラと降り注いでいた。
「たのしむ?」
「たのしんでいいんですか?」
ドゥードゥー先生はニッコリと笑う。
「いいに決まってます。そうでないと、こんな体力も気力も使うもの、やってられませんよ」
ルイゾン様も同意した。
「その通りだ。ロベール、マルセル」
ふたりは見上げるようにして、ルイゾン様に問いかける。
「父上もたのしんでますか?」
「まほう、たのしいですか?」
「ああ。ここだけの話、魔獣にうまく魔法をかけられた時は心の中で叫んでいる。よしってな」
ロベールとマルセルはお互いを見て笑い合った。魔獣に魔法をかけるルイゾン様を想像しているのだろう。
――魔法を楽しむ。
正直、私にもその考えはなかった。思わず呟く。
「楽しんではいけないと思っていました」
人より魔力が多い私は、亡くなったソフィアお母様から魔法が使えることを隠すように言われて育った。継母となり、人々の前で魔法を使うようになってからも、ふとソフィアお母様を思い出すことがある。そのたびに、これは必要な魔法だからと自分に言い聞かせて使っていたのだが、そんな私にとって魔法を楽しむという発想は新境地だった。
ドゥードゥー先生は立ち上がって答える。
「もちろん、人を傷つける魔法はダメです。それは法でも禁止されていますよね」
ルイゾン様が頷いた。
「その通りだ。魔法でもそれ以外の方法でも、人を傷つけるとこの国では罰せられる」
木漏れ日がルイゾン様とドゥードゥー先生に降り注ぐ。
ドゥードゥー先生は、少し明るく透けたワインレッドの髪を揺らした。
「だけど、できないことができるようになるのは楽しいでしょう? それと同じように、魔法を使うのも楽しんでいいと思うんです。そこからまた新しいなにかが生まれるはずですから」
そうか、と思った私は呟く。
思えば、最初。家族に隠れてこっそりと本を読んで魔法を使っていたあの頃。できなかった魔法を少しずつ、習得していったあの頃。
確かに、魔法を使うことが楽しいと思う瞬間があった。心の奥底にしまいすぎて忘れていたけれど。
私は顔を上げてドゥードゥー先生に言う。
「今からでも楽しめるでしょうか」
「もちろんです」
ロベールがすかさず叫んだ。
「わたしもたのしみたいです!」
「わたしは……」
言葉を呑み込むマルセルを、ドゥードゥー先生が素早く励ます。
「マルセル様も楽しんでください」
「でも……わたし」
いつの間にか魔力が満ちていたロベールと違い、マルセルは魔力なしのままだ。そのことに引け目を感じていることもわかっていた。
だけどドゥードゥー先生は優しく促す。
「さっき、ロベール様の魔法を説明するの、楽しかったでしょう?」
マルセルは遠慮がちな声を出した。
「はい。でもあれはロベールのまほうだから」
「それでいいんです。私も体が弱くて、剣が苦手だった。それで魔法学にのめり込んだんですが、結果的に兄たちが剣を振るって魔獣を倒す時の助けになりました。なんでも巡り巡るんです。目の前のことを真っ当に楽しんでいれば」
「めぐる……」
マルセルがためらったように繰り返すのを見て、ロベールが小さな手をギュッと握って力説する。
「マルセルはすごいよ! わたしはあんなにまほうのしゅるい、おぼえられない。わたしよりもさきに、じゅもんおぼえている」
マルセルが戸惑ったように答えた。
「それはだって、おもしろいからおぼえていただけで」
ドゥードゥー先生がふたりに向かって小さく拍手する。
「そう。そういうことです。それでいいんですよ」
胸がいっぱいになりながらその様子を見守っていた私の肩を、ルイゾン様がそっと抱いた。
不思議なことにその時ばかりは挙動不審にならず、ふたりでロベールとマルセルを見守ることができた。
きっと、ルイゾン様も同じ気持ちだとわかっていたからかもしれない。
――どんな形でもいい。ロベールとマルセルが健やかに、楽しみながら成長しますように。
木漏れ日がふたりの銀髪にキラキラと降り注いでいた。


