彼女が「魔女」であるから

できること

ベルゼ商会に勤め始めて、二週間。

私は相変わらず、会長室にいた。

届いた書類を仕分ける。

返信の必要なものをまとめる。

会長の印が必要なものを机の上に置く。

目立つ仕事ではない。

けれど、私はこの仕事が嫌いではなかった。

人と話す必要が少ないから。

「この書類、期限が近いわ」

一瞬迷った。

でも、

「届けに行こう」

部屋を出た。



廊下を歩いていると、向こうから商会員が歩いてくる。ベルゼ商会の人はみんなおしゃれで、制服の乱れはないが、小物や髪型へのこだわりが素敵だ。

「あ」

小さな声だった。

「会長室の子だ」

「……」

聞こえないふりをした。

「いつも会長室にいるよね」

「うん」

「何してるんだろ」

「さあ。私たちには分からないよね」

「会長が直接連れてきた子なんでしょう?」

「そうらしいよ」

「じゃあ、相当気に入られてるんじゃない?」

くすくす、と笑う声。

私はそのまま通り過ぎた。

別に、気にならない。

……気にしない。

そう思いこんだ。

「失礼します」

第一倉庫に書類を届ける。

「ありがとう、ちょうど探してたんだよね」

向けられる笑みにドキドキしておもわず顔をそらす。

「いえ」

それだけ言って、そそくさと会長室へ戻った。

扉を閉める。

静かだ。

ほっとする。

やっぱり、ここが一番楽だった。

けど、胸のぬくもりは消えない。



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