百十一は思う。ある意味、難攻不落だと。
「てか、今の若者や子どもにだってシンプルさは求められてるんじゃないんすか?」
「百十一、言葉遣いに気をつけて。」
「そちらの売りは“誰でも使える生活用品”なんでしょ? それならいちいちペルソナ設定しなくたってよくないっすか?」
「百十一、ちょっと黙ろうか。」
お利口な俺のリードは、いつだって修多良が握っている。だから『黙れ』と言われたら黙るしかない。
「なんでもかんでも先にターゲット層決める必要なんてないでしょ。客なんて後からついてくるもんなんだから。」
はは、と笑いながらシャーペンを回せば、隣の修多良に足を踏まれた。顔はポーカーフェイスの癖して、誰かさんみたいに攻撃性が高い。
「……つまり、ターゲットを絞らないことで集客の枠を広げると、そういうことですか?」
「そうそう。」
「なるほど。その発想はなかったです!」
ほら見ろ修多良。俺の提案、クライアントに高評価だろ? ドヤぁ。と脚を組めば、修多良がわかりやすく咳払いをする。
「御社の商品はシンプルなのに温かみがあるので、必ず幅広い世代が手にしたくなるアイテムだと思います。」
「ありがとうございます。実は“木の温もり”を意識した商品開発をしておりまして。」
「なるほど、そうでしたか! 癒やしを感じながら、学校やビジネスでも気軽に使えるものばかりなんて素敵ですね。」
「いえ、そう褒められるとなんだか照れてしまいますが。ありがとうございます。」
修多良の完ぺきなフォローが鼻につく。俺の不躾な態度をクライアントの脳裏から消去する作戦だ。男が『素敵』とか言ってギャップ萌え狙うな。
「と、百十一さん。もしかしてそれ、当社のロゴですか??」
「ええ。皆にソッコー読んでもらいやすいようデカデカと、且シンプルに。」
「すごいですね! 今の数分で枠組みとロゴを?」
「キャッチコピーは『ひとめぼれ以上の価値』ってのはどうです?」
「……ええと、もう少し違ったニュアンスがいいかなと。お米の商品名と被るので。」
「あそう。」
クライアントの見送り後、殿池が別件で俺と修多良を訪ねにきた。どうやら営業部飲み会の件らしい。
「修多良さん、百十一さん、僕今回の幹事なんですけど、なにか希望はないですか?」
「立ち飲みセンベロ食堂。」
「梅焼酎と十割そばの専門店。」
「個人的趣味に走りすぎですよ〜。僕が部長に怒られちゃいますって!」
話にならないと、殿池があきれ顔をみせる。俺と修多良に聞くのが間違ってる。
「いいですよもう! 越名さんにあたってみますから。」
「うぉい待てぃ。」
「はい?」
「なんで越名が出てくんの?」
「なんでって。越名さん、安全で健全な飲み会の場所をよくご存知ですから。」
「はあ? お前、何仲良くなってんの?」
「この間、百十一さんに頼まれたおつかい、越名さんが代わりに行ってくれたじゃないですか。その時からよく話すようになりましたけど。」
おいおい。敬遠してる輩が多いってのに。意外と若いやつのが越名の見えないバリケードも突破するってのか?
修多良が面白そうな顔で、俺と殿池を見比べてくる。
「ねえ殿池君。せっかくだから君も乗らない? 俺たちのゲーム。」
「はい? ゲーム、ですか? なんのゲームです?」
はあ。まあた修多良は、俺の繊細な心を乱そうとする。
「殿池君さ、前にうちの社内だったら越名さんが一番タイプって言ってたじゃない?」
「い、いえ、あ、あれは! うちの社内にいるまともな人が越名さんだけって話で!」
「もし君が越名さんを堕とせたら、3万あげよっか。」
「え、えええええ!! な、なに言ってんですか!」
殿池が顔を真っ赤にしてうろたえる。は? てか今の言葉は聞き捨てならねえ。
「百十一、言葉遣いに気をつけて。」
「そちらの売りは“誰でも使える生活用品”なんでしょ? それならいちいちペルソナ設定しなくたってよくないっすか?」
「百十一、ちょっと黙ろうか。」
お利口な俺のリードは、いつだって修多良が握っている。だから『黙れ』と言われたら黙るしかない。
「なんでもかんでも先にターゲット層決める必要なんてないでしょ。客なんて後からついてくるもんなんだから。」
はは、と笑いながらシャーペンを回せば、隣の修多良に足を踏まれた。顔はポーカーフェイスの癖して、誰かさんみたいに攻撃性が高い。
「……つまり、ターゲットを絞らないことで集客の枠を広げると、そういうことですか?」
「そうそう。」
「なるほど。その発想はなかったです!」
ほら見ろ修多良。俺の提案、クライアントに高評価だろ? ドヤぁ。と脚を組めば、修多良がわかりやすく咳払いをする。
「御社の商品はシンプルなのに温かみがあるので、必ず幅広い世代が手にしたくなるアイテムだと思います。」
「ありがとうございます。実は“木の温もり”を意識した商品開発をしておりまして。」
「なるほど、そうでしたか! 癒やしを感じながら、学校やビジネスでも気軽に使えるものばかりなんて素敵ですね。」
「いえ、そう褒められるとなんだか照れてしまいますが。ありがとうございます。」
修多良の完ぺきなフォローが鼻につく。俺の不躾な態度をクライアントの脳裏から消去する作戦だ。男が『素敵』とか言ってギャップ萌え狙うな。
「と、百十一さん。もしかしてそれ、当社のロゴですか??」
「ええ。皆にソッコー読んでもらいやすいようデカデカと、且シンプルに。」
「すごいですね! 今の数分で枠組みとロゴを?」
「キャッチコピーは『ひとめぼれ以上の価値』ってのはどうです?」
「……ええと、もう少し違ったニュアンスがいいかなと。お米の商品名と被るので。」
「あそう。」
クライアントの見送り後、殿池が別件で俺と修多良を訪ねにきた。どうやら営業部飲み会の件らしい。
「修多良さん、百十一さん、僕今回の幹事なんですけど、なにか希望はないですか?」
「立ち飲みセンベロ食堂。」
「梅焼酎と十割そばの専門店。」
「個人的趣味に走りすぎですよ〜。僕が部長に怒られちゃいますって!」
話にならないと、殿池があきれ顔をみせる。俺と修多良に聞くのが間違ってる。
「いいですよもう! 越名さんにあたってみますから。」
「うぉい待てぃ。」
「はい?」
「なんで越名が出てくんの?」
「なんでって。越名さん、安全で健全な飲み会の場所をよくご存知ですから。」
「はあ? お前、何仲良くなってんの?」
「この間、百十一さんに頼まれたおつかい、越名さんが代わりに行ってくれたじゃないですか。その時からよく話すようになりましたけど。」
おいおい。敬遠してる輩が多いってのに。意外と若いやつのが越名の見えないバリケードも突破するってのか?
修多良が面白そうな顔で、俺と殿池を見比べてくる。
「ねえ殿池君。せっかくだから君も乗らない? 俺たちのゲーム。」
「はい? ゲーム、ですか? なんのゲームです?」
はあ。まあた修多良は、俺の繊細な心を乱そうとする。
「殿池君さ、前にうちの社内だったら越名さんが一番タイプって言ってたじゃない?」
「い、いえ、あ、あれは! うちの社内にいるまともな人が越名さんだけって話で!」
「もし君が越名さんを堕とせたら、3万あげよっか。」
「え、えええええ!! な、なに言ってんですか!」
殿池が顔を真っ赤にしてうろたえる。は? てか今の言葉は聞き捨てならねえ。