百十一は思う。ある意味、難攻不落だと。
シャビーシックは覆水盆に帰る
「あ、あの! じゃあせめてラインだけでもさせてください!」
私の言葉に何も返してくれない百十一さん。私の申し出も夜に掻き消され、手首をつかまれたまま、家まで引っ張られていく。
振り解こうとしても絶対に解けそうにない。こんなに怒っている百十一さんを見るのは初めてだ。
どうやら私は、昔から異性を怒らせるのがすこぶる得意らしい。他人のミスを指摘して怒らせたのは数知れず。異性が、図星を突かれることほど嫌なことはないと学んだのは大学生になってからだった。
それでも最近では昔の反省を生かし、ミスの指摘はしていないつもりだったのに、成人男性の怒りを買ってしまっている。真木先輩といい、百十一さんといい……。
ただただお父さんに褒められたかっただけの私が、褒められることを望むのは間違っているだろうか?
そんなことを未だに考えている私は、まだまだ小さな子供なのかもしれない。
「入れ。」
鍵を雑に開ける百十一さんに、部屋の中へと促される。閑静な住宅街に佇む、レンガ造りの低層マンションでオートロック付き。駐車場も地下にあって、恐らくかなり値の張る物件なのだろう。
二重ロックだというのに、一つしか施錠していない。なんて不用心な、と一人胸の中でつっこみを入れるも、あっという間に玄関でキスをされた。
「んっ」
「もうキスした? された?」
「な、んッ……ふ」
「舌は? 突っ込まれた? どこまで許した?」
彼の舌を舌で遮るのも虚しく容易に突破される。ただし喉の奥の方まで舌を入れられるも、えづくほど奥じゃない。怒っているなりに、加減もしてくれているのがわかる。
靴も脱がずに玄関で押し倒されて、タイトスカートの間に膝を入れられた。まるで『縋りたきゃ自分で縋れ』とでも言われているかのように、私の敏感な部分まで押し上げられることはなかった。
「なにキスだけで蕩けちゃってんだよ? いい加減にしろよてめぇ。」
「っ、ふ、ぅぁ」
「俺にはお前と先輩とやらの過去なんざ知りもしないよ? でもなあ、どうせ選ぶならアイツだけはやめとけ。」
この人は、なんでそんなに私のテリトリーに入り込みたがるの? もっと適切な言い方とか、正しいやり方があるはずなのに。
いつだって“私が悪い”みたいな言い方で好き勝手に距離を詰めてくる傍若無人な人。私がどれだけ駄目な人間かなんて自分が一番わかっているのだから、せめて図星を突きつけてこないでほしい。
きっと百十一さんには、私の“カレシ”が誰かなんてお見通しなのだ。
本当は知られたくなかった。先輩と付き合ってることも、このお付き合いが不本意だということも。何でも見透かさす百十一さんには、知られなくなかった。
「……なんで、泣いてんだよ」
「……」
「そうかよ。泣くくらい俺のことが嫌かよ」
私を見る百十一さんの瞳が揺らめく。自分で襲っておきながら百十一さんの方が寂しい目をしているのはなぜだろう。
伸ばした腕が、狭い廊下に置かれた段ボールに当たる。玄関には、仕舞われていない靴が散らばっている。
玄関の自動人感ライトも、すでに電球が切れてしまっているよう。傘立てすら見当たらない玄関で、私は涙ながらに百十一さんに訴えた。
「も、百十一さん!!」
「なによ」
「部屋が、汚すぎますっ!!」
「……え。」
玄関開けた瞬間、真っ暗でもわかるほど物が散乱状態。あの、私を押し倒した玄関はちゃんと掃除してますか?!
私の言葉に何も返してくれない百十一さん。私の申し出も夜に掻き消され、手首をつかまれたまま、家まで引っ張られていく。
振り解こうとしても絶対に解けそうにない。こんなに怒っている百十一さんを見るのは初めてだ。
どうやら私は、昔から異性を怒らせるのがすこぶる得意らしい。他人のミスを指摘して怒らせたのは数知れず。異性が、図星を突かれることほど嫌なことはないと学んだのは大学生になってからだった。
それでも最近では昔の反省を生かし、ミスの指摘はしていないつもりだったのに、成人男性の怒りを買ってしまっている。真木先輩といい、百十一さんといい……。
ただただお父さんに褒められたかっただけの私が、褒められることを望むのは間違っているだろうか?
そんなことを未だに考えている私は、まだまだ小さな子供なのかもしれない。
「入れ。」
鍵を雑に開ける百十一さんに、部屋の中へと促される。閑静な住宅街に佇む、レンガ造りの低層マンションでオートロック付き。駐車場も地下にあって、恐らくかなり値の張る物件なのだろう。
二重ロックだというのに、一つしか施錠していない。なんて不用心な、と一人胸の中でつっこみを入れるも、あっという間に玄関でキスをされた。
「んっ」
「もうキスした? された?」
「な、んッ……ふ」
「舌は? 突っ込まれた? どこまで許した?」
彼の舌を舌で遮るのも虚しく容易に突破される。ただし喉の奥の方まで舌を入れられるも、えづくほど奥じゃない。怒っているなりに、加減もしてくれているのがわかる。
靴も脱がずに玄関で押し倒されて、タイトスカートの間に膝を入れられた。まるで『縋りたきゃ自分で縋れ』とでも言われているかのように、私の敏感な部分まで押し上げられることはなかった。
「なにキスだけで蕩けちゃってんだよ? いい加減にしろよてめぇ。」
「っ、ふ、ぅぁ」
「俺にはお前と先輩とやらの過去なんざ知りもしないよ? でもなあ、どうせ選ぶならアイツだけはやめとけ。」
この人は、なんでそんなに私のテリトリーに入り込みたがるの? もっと適切な言い方とか、正しいやり方があるはずなのに。
いつだって“私が悪い”みたいな言い方で好き勝手に距離を詰めてくる傍若無人な人。私がどれだけ駄目な人間かなんて自分が一番わかっているのだから、せめて図星を突きつけてこないでほしい。
きっと百十一さんには、私の“カレシ”が誰かなんてお見通しなのだ。
本当は知られたくなかった。先輩と付き合ってることも、このお付き合いが不本意だということも。何でも見透かさす百十一さんには、知られなくなかった。
「……なんで、泣いてんだよ」
「……」
「そうかよ。泣くくらい俺のことが嫌かよ」
私を見る百十一さんの瞳が揺らめく。自分で襲っておきながら百十一さんの方が寂しい目をしているのはなぜだろう。
伸ばした腕が、狭い廊下に置かれた段ボールに当たる。玄関には、仕舞われていない靴が散らばっている。
玄関の自動人感ライトも、すでに電球が切れてしまっているよう。傘立てすら見当たらない玄関で、私は涙ながらに百十一さんに訴えた。
「も、百十一さん!!」
「なによ」
「部屋が、汚すぎますっ!!」
「……え。」
玄関開けた瞬間、真っ暗でもわかるほど物が散乱状態。あの、私を押し倒した玄関はちゃんと掃除してますか?!