百十一は思う。ある意味、難攻不落だと。
「いいえ。体調を崩しているなら尚更、動かすのは控えた方がいいかと。」
  
「で。ですよね〜。」      

「それと、百十一さん。」

「は、はい! なんでしょうお母様?」

「これ、あなたから渡してやって下さい。」

俺の右手を無理やり取って、越名父が書いたメモ書きを手の中に渡してきた。さすがに目を見張る。     
    
「ちょ。お、俺から渡して、いいんですか?」

「ここ最近、和果がうちに帰ってくる度あなたの悪口ばかり言うんです。今まであの子の口から人の悪口なんて聞いたことがないのに、ですよ?」

「へ?」

「それに、和果があなたに鍵を預けたということは、よほどあなたを信頼しているのだと思います。」

「それ、俺って褒められてます?」

「どうか和果のこと、よろしくお願いします、百十一さん。」 
 
俺に向かって、深く頭を下げる越名母。小声で、「不本意ではありますが。」と付け足したのを聞き逃さなかった。 

俺、好かれてるのか嫌われてるのかどっちなんだい??

「せめて駅まで送って行きます!」と玄関までやって来た真木を無視し、越名母は帰ってしまった。


 越名のいない越名の部屋で、俺達2人はその場にへたりこんで脱力する。真木には勝って、母には負けたとでもいうべきか。

「……あのさあ、タバコ持ってない?」

「は? お前タバコ吸うの?」

「疲れた時だけね。てか百十一さん、すっごい適当そうにみえて実はけっこう人の言動に鋭く目を光らせてるから嫌な人だよね。」

「あ〜ハイハイ、それがてめえの本性ってわけね。」

「僕、もう頂点も底辺も経験済みだから。今さら誰に何を言おうが僕は構わないよ。」

「越名にも?」

「それは駄目。」

「ふざけてんのかお前。」

廊下の壁に背をつき、脚を伸ばす真木。サラサラな髪のせいか、掻き上げても髪はすぐに元の位置に戻っていた。

「僕、越名にムカつくあまり、越名をだいぶ傷つけたよ。けっこう色んなことした。車ん中でぶちギレたし、」

「あ、それ俺もやった。」

「不良に絡まれてるのに、助けに行かなかったし、」  
   
「あ、俺も元彼に絡まれて嫌がってる越名を助けなかった。」

「あとアブノーマルなセックスもした。」

「はぁぁぁああ?!!!」

さすがにムカついた俺は、真木の頭を思い切りグーで殴ってやった。
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