【コンテスト用シナリオ】完全無欠の生徒会長は、自暴自棄な脱力系男子に溺愛される
第二話:雨と距離
〇告白の次の日、朝のHR前、2年C組の教室
ひかりは自席で読書をしている。まもなくHRというところで、遅刻ギリギリで夜斗が入ってくる。
夜斗「おはよ」
夜斗がひかりに挨拶をすると、周囲が騒然とする。
モブ女子「白堂くんが黒宮さんに挨拶した……!?」
モブ女子「ほら、やっぱり昨日アレしたんだよ!」
モブ男子「あいつ他人に挨拶とかするんだ」
モブ男子「基本ずっと寝てるもんな」
あっという間にクラス中の注目の的になってしまうひかりは頭を抱えてしまう。
ひかり(こ、こんなんじゃすぐに付き合ってることがバレるのでは……!)
夜斗の挨拶を無視し、授業中も夜斗が視線を送ってくるのを徹底的に無視するひかり。
昼休みになった瞬間、夜斗が声を掛けようとするのもお構いなしにひかりは教室から飛び出していく。無表情で見送る夜斗。
夜斗「……」
〇生徒会室
ひかり「やっぱり付き合うなんて間違いだったのかな……いやでも、この間のことを言いふらされたら……」
一人ぼっちで弁当を食べるひかりは悶々と悩む。常に自他に厳しくあろうとしたひかり、これまで学校で築いてきた地位が崩れてしまうことを恐れている。
だが、誰かに弱みを握られ屈するのもまた弱さではないか?という考えにも至りつつある。
ひかり「ううん、高校生たるもの、男女交際に現を抜かすなんてあってはならないわ。あんな人に弱みを握られるのも心外だし。後で断って―」
夜斗「いつも一人でここにいんの?」
ひかり「うわーっ!」
いつの間にか扉を開けて後ろになっていた夜斗にびっくりするひかり。
ひかり「ちょっと、驚かさないでよ! あと、ここは生徒会以外立ち入り禁止!」
ひかりの怒りを無視し、隣の席に座る夜斗。購買で買ったパンを開けて食べ始める。
ひかり(な、なんてマイペースなのかしら……)
ひかり「あの、白堂くん」
夜斗「名前で呼んでよ、付き合ってるんだし」
ひかり「そのことなんだけど、や、やっぱり付き合うっていうのはやめたくて……」
夜斗「……」
夜斗の目の色が変わる。
ひかり「学生の本文は勉強だし、こういったことは良くないと思う。……泣いていたことを知られるのは嫌だけど、あ、あなたがしたいようにしてもらって構わないわ!」
言った!という勢いのひかり、ちらりと夜斗の顔を見ると、思っていたのとは違って、悲壮感漂う悲し気な表情をしている。
ひかり「えっと、白堂くん……?」
恐る恐る話しかけると、夜斗は何も言わずに席を立ち、生徒会室を去っていく。
何となく感じる後味の悪さに、不安な表情のひかり。
〇2年C組、午後の授業中~放課後
夜斗は前と同じに戻り、ひかりに絡むことはなくなった。
終礼後、すぐに教室を出ていく夜斗の背中を見送るひかり。気を取り直し、自習に励むために図書室へ移動しようとする。
〇中央校舎廊下
図書室へ向かうひかり。すれ違う他クラスのモブ女子(派手目ギャル)二人がひかりを睨む。
ひかり「何かご用でも?」
毅然とした態度を取るひかりに、ギャル1がぶっきらぼうに返事をする。
ギャル1「別に」
ギャル2「生徒会長もカレシとか欲しいんだね、意外~」
ギャル2の台詞にひかりが眉を顰める。
ひかり「どういう意味ですか?」
ギャル1「は? ウチらE組まで噂回ってっけど。アンタが白堂に告白したって」
ギャル2「結構イケメンだから狙ってる子多かったのにね~」
驚きの噂に、ひかりは絶句する。
ひかり「な、っ……! 誤解です! そんなことはしてないし、そもそも付き合ってない!」
全力で拒否するひかりを尻目に、そうなんだ、と興味なさそうに去っていくギャル二人。
ひかり(どういうことなの……!? もしかして、私が白堂くんを屋上に呼び出したから?)
急いで図書室に向かう途中にも、多くの好奇の目にさらされる。図書室について自習をしようとしても、周りから見られているような気がしてどうにも集中できない。
ひかり(どうして、どうして……!)
〇下校時間、中央校舎エントランス
結局ほとんど勉強に集中できなかったひかり。早めに切り上げて外に出ると、土砂降りの雨が降っている。傘は持っていない。
ひかり「さ、最悪……」
いつもであれば天気予報を見てから家を出るのに、昨日から色々と起こりすぎてそんな余裕がなかった。
ひかり「あ……」
途方に暮れるひかりの横に現れたのは夜だった。手に持ったビニール傘を開いてひかりの頭の上にさす。
夜斗「入る?」
ひかり「いらない」
夜斗の提案を断り、土砂降りの雨の中を歩きだすひかり。後ろから夜斗がついてくる。
ひかり「ついてこないで」
夜斗はそれを無視して後ろをついていく。
〇校門を出て少し歩いたところの最寄りバス停
二人横並びでバスを待っている。
すっかり全身ずぶ濡れになってしまったひかりに夜斗がもう一度傘をさそうとするが、ひかりが夜斗の傘を持つ手を勢いよく振り払う。
ひかり「やめてって言ってるでしょ!?」
振り返り、夜斗を睨みつけるひかり。
ひかり「あなたのせいで何もかもめちゃくちゃなのよ! お願いだから近寄らないで!」
唇は震え、泣いているようにも見えるが、涙は雨に混じっている。
すると、夜斗がいきなりひかりの後頭部を掴んで引き寄せ、髪や頬、目じりに何度も軽くキスをする。
ひかり「ちょっと…!」
ひかりが抵抗すると、ゆっくり離れた夜斗はかつてないほど真剣な表情でひかりを見つめる。
夜斗「俺じゃ駄目なの? 俺なら、ひかりを守ってあげられる」
真剣さと圧で気圧され、黙るひかり。
夜斗「好きだよ」
熱っぽい声に加え、雨の雫で夜斗の髪や肩が濡れていて色気すら出している。
ひかり「そんな、こと……」
夜斗の猛プッシュに対して、周りに味方はおらず、一人で抱え込んできたこれまでを思い出し、揺らぐひかり。
夜斗「ねぇ、どうする?」
夜斗が聞くと、ひかりは一度ぐっと唇を噛み締める。
ひかり「私は、あなたに守られる必要はない。今までもこれからも、一人で十分だわ」
そっと夜斗を下から見上げる。
ひかり「でも、いくら考えても分からないの。どうしたらあなたのことを考えなくて済むのか……」
苦し気なその問いを聞いてから、夜斗はひかりの髪を愛おしそうに撫でる。
夜斗「崩れてぐちゃぐちゃになってるひかり、可愛い。もっと俺のことだけ考えて」
夜斗はどこかうっとりとした瞳でひかりを見下ろしている。
ひかり「……あなたって、本当に最低ね」
ひかりは呆れ、嘲笑する。夜斗はもう一度ひかりのおでこにキスをする。
ひかり(あぁ、彼からは逃れられないのかもしれない)
ひかりはそっと夜斗の方に手を伸ばす。
気が付けば、二人の手は軽く触れ、そこから自然と繋がれていた。
ひかりは自席で読書をしている。まもなくHRというところで、遅刻ギリギリで夜斗が入ってくる。
夜斗「おはよ」
夜斗がひかりに挨拶をすると、周囲が騒然とする。
モブ女子「白堂くんが黒宮さんに挨拶した……!?」
モブ女子「ほら、やっぱり昨日アレしたんだよ!」
モブ男子「あいつ他人に挨拶とかするんだ」
モブ男子「基本ずっと寝てるもんな」
あっという間にクラス中の注目の的になってしまうひかりは頭を抱えてしまう。
ひかり(こ、こんなんじゃすぐに付き合ってることがバレるのでは……!)
夜斗の挨拶を無視し、授業中も夜斗が視線を送ってくるのを徹底的に無視するひかり。
昼休みになった瞬間、夜斗が声を掛けようとするのもお構いなしにひかりは教室から飛び出していく。無表情で見送る夜斗。
夜斗「……」
〇生徒会室
ひかり「やっぱり付き合うなんて間違いだったのかな……いやでも、この間のことを言いふらされたら……」
一人ぼっちで弁当を食べるひかりは悶々と悩む。常に自他に厳しくあろうとしたひかり、これまで学校で築いてきた地位が崩れてしまうことを恐れている。
だが、誰かに弱みを握られ屈するのもまた弱さではないか?という考えにも至りつつある。
ひかり「ううん、高校生たるもの、男女交際に現を抜かすなんてあってはならないわ。あんな人に弱みを握られるのも心外だし。後で断って―」
夜斗「いつも一人でここにいんの?」
ひかり「うわーっ!」
いつの間にか扉を開けて後ろになっていた夜斗にびっくりするひかり。
ひかり「ちょっと、驚かさないでよ! あと、ここは生徒会以外立ち入り禁止!」
ひかりの怒りを無視し、隣の席に座る夜斗。購買で買ったパンを開けて食べ始める。
ひかり(な、なんてマイペースなのかしら……)
ひかり「あの、白堂くん」
夜斗「名前で呼んでよ、付き合ってるんだし」
ひかり「そのことなんだけど、や、やっぱり付き合うっていうのはやめたくて……」
夜斗「……」
夜斗の目の色が変わる。
ひかり「学生の本文は勉強だし、こういったことは良くないと思う。……泣いていたことを知られるのは嫌だけど、あ、あなたがしたいようにしてもらって構わないわ!」
言った!という勢いのひかり、ちらりと夜斗の顔を見ると、思っていたのとは違って、悲壮感漂う悲し気な表情をしている。
ひかり「えっと、白堂くん……?」
恐る恐る話しかけると、夜斗は何も言わずに席を立ち、生徒会室を去っていく。
何となく感じる後味の悪さに、不安な表情のひかり。
〇2年C組、午後の授業中~放課後
夜斗は前と同じに戻り、ひかりに絡むことはなくなった。
終礼後、すぐに教室を出ていく夜斗の背中を見送るひかり。気を取り直し、自習に励むために図書室へ移動しようとする。
〇中央校舎廊下
図書室へ向かうひかり。すれ違う他クラスのモブ女子(派手目ギャル)二人がひかりを睨む。
ひかり「何かご用でも?」
毅然とした態度を取るひかりに、ギャル1がぶっきらぼうに返事をする。
ギャル1「別に」
ギャル2「生徒会長もカレシとか欲しいんだね、意外~」
ギャル2の台詞にひかりが眉を顰める。
ひかり「どういう意味ですか?」
ギャル1「は? ウチらE組まで噂回ってっけど。アンタが白堂に告白したって」
ギャル2「結構イケメンだから狙ってる子多かったのにね~」
驚きの噂に、ひかりは絶句する。
ひかり「な、っ……! 誤解です! そんなことはしてないし、そもそも付き合ってない!」
全力で拒否するひかりを尻目に、そうなんだ、と興味なさそうに去っていくギャル二人。
ひかり(どういうことなの……!? もしかして、私が白堂くんを屋上に呼び出したから?)
急いで図書室に向かう途中にも、多くの好奇の目にさらされる。図書室について自習をしようとしても、周りから見られているような気がしてどうにも集中できない。
ひかり(どうして、どうして……!)
〇下校時間、中央校舎エントランス
結局ほとんど勉強に集中できなかったひかり。早めに切り上げて外に出ると、土砂降りの雨が降っている。傘は持っていない。
ひかり「さ、最悪……」
いつもであれば天気予報を見てから家を出るのに、昨日から色々と起こりすぎてそんな余裕がなかった。
ひかり「あ……」
途方に暮れるひかりの横に現れたのは夜だった。手に持ったビニール傘を開いてひかりの頭の上にさす。
夜斗「入る?」
ひかり「いらない」
夜斗の提案を断り、土砂降りの雨の中を歩きだすひかり。後ろから夜斗がついてくる。
ひかり「ついてこないで」
夜斗はそれを無視して後ろをついていく。
〇校門を出て少し歩いたところの最寄りバス停
二人横並びでバスを待っている。
すっかり全身ずぶ濡れになってしまったひかりに夜斗がもう一度傘をさそうとするが、ひかりが夜斗の傘を持つ手を勢いよく振り払う。
ひかり「やめてって言ってるでしょ!?」
振り返り、夜斗を睨みつけるひかり。
ひかり「あなたのせいで何もかもめちゃくちゃなのよ! お願いだから近寄らないで!」
唇は震え、泣いているようにも見えるが、涙は雨に混じっている。
すると、夜斗がいきなりひかりの後頭部を掴んで引き寄せ、髪や頬、目じりに何度も軽くキスをする。
ひかり「ちょっと…!」
ひかりが抵抗すると、ゆっくり離れた夜斗はかつてないほど真剣な表情でひかりを見つめる。
夜斗「俺じゃ駄目なの? 俺なら、ひかりを守ってあげられる」
真剣さと圧で気圧され、黙るひかり。
夜斗「好きだよ」
熱っぽい声に加え、雨の雫で夜斗の髪や肩が濡れていて色気すら出している。
ひかり「そんな、こと……」
夜斗の猛プッシュに対して、周りに味方はおらず、一人で抱え込んできたこれまでを思い出し、揺らぐひかり。
夜斗「ねぇ、どうする?」
夜斗が聞くと、ひかりは一度ぐっと唇を噛み締める。
ひかり「私は、あなたに守られる必要はない。今までもこれからも、一人で十分だわ」
そっと夜斗を下から見上げる。
ひかり「でも、いくら考えても分からないの。どうしたらあなたのことを考えなくて済むのか……」
苦し気なその問いを聞いてから、夜斗はひかりの髪を愛おしそうに撫でる。
夜斗「崩れてぐちゃぐちゃになってるひかり、可愛い。もっと俺のことだけ考えて」
夜斗はどこかうっとりとした瞳でひかりを見下ろしている。
ひかり「……あなたって、本当に最低ね」
ひかりは呆れ、嘲笑する。夜斗はもう一度ひかりのおでこにキスをする。
ひかり(あぁ、彼からは逃れられないのかもしれない)
ひかりはそっと夜斗の方に手を伸ばす。
気が付けば、二人の手は軽く触れ、そこから自然と繋がれていた。