拝啓、愛しのパイロット様
「なんだい、仁科さん」
「こちらに書かれた字が不鮮明でして……」
デスクの上にオーダー表を置いて訴えると、神城は露骨に眉をしかめた。
「困るなあ。これぐらい、ちゃんと読みとってくれないと」
まるでこちらに落ち度があると言わんばかりの口調に、思わずこめかみがヒクリと動く。
(いけない、いけない。冷静にならなきゃ)
小町は表情を変えないよう注意しながら、顔に取ってつけたような笑みを貼り付けた。
神城の書いた文字は、お世辞にも上手いとは言えない。字を習いたての小学生一年生の方がまだ上手いかもしれない。
書いた本人にしかわからず他人には判別不可能。なんなら神城自身もときおり首を傾げるほどの乱筆具合には、これまで何度も困らされている。
「申し訳ありません。お手数ですが、教えていただけますか?」
小町は本心を隠し、正しい内容を聞き出すことだけに注力した。
へりくだった態度に満足したのか、神城は椅子にふんぞり返り、尊大な態度でオーダー表を指さした。
「これは、ボールペンが十ケース。こっちは学習ノートが二十ケース」
「わかりました。ありがとうございます」
小町は神城から聞き取った内容を即座にメモした。
(これで進められる)
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、メモを終えた小町がオーダー表片手にデスクに戻ろうとしたそのとき。
「こんなことでわざわざ話しかけてくるなんて、仁科さんはかわいいなあ」
神城がニヤニヤと笑いながらこれみよがしに口を開く。