拝啓、愛しのパイロット様
(やっぱり苦手だな)
あまりことを荒立てないように下手に出ているのは、彼が社長の息子だからに他ならない。
未来のスターライト文具を背負って立つべく、部長という職をあてがわれているだけで、神城に管理職としての適性があるとはとても思えない。
彼は自意識過剰なところがあるようで、女性は皆自分に気があると勘違いしている。
小町のことだって、自分の気を引きたくてわざと話しかけてくると思っている。
どこをどう考えたらそんな突飛な考えに行き当たるのか、さっぱり理解できない。
(神城部長を好きになるなんてありえないのに)
彼の字は『字を書くのが苦手』というレベルを超えている。
外見の美醜はともかくとして、乱筆は小町にとって致命的だ。
誰でも得意不得意があり、字が綺麗な人もいれば、そうでない人もいる。
小町も字を見ただけで、人格を否定するつもりはない。
けれど、字が綺麗でなくても丁寧に書こう、人に伝えようという気概があるのかないのか、簡単にわかる。
そもそも神城は人に伝えようという気がないのだ。
傲慢さが書く文字にも表れているようで、やはり好きになれない。
(早く仕事を終わらせよう)
小町はデスクに戻ると、素早くパソコンに向き直った。
上司との会話で疲れた今日は、一刻も早く美しい文字を眺めたい。