拝啓、愛しのパイロット様
そう告げたわずか五分後。
「じゃあ、いってくる」
「いってらっしゃい」
由桔也は愛用のスーツケース片手に慌ただしく、空港へ出かけて行った。
彼を玄関から見送った小町はパタンと閉まった扉に向かって、そっと息を吐き出した。
パイロットの勤務スケジュールは不規則だ。
あらかじめフライトの予定が組まれていることもあれば、パイロットの急病や不測の事態に備えた予備要員として、指定の時間まで待機するケースもある。
待機場所はさまざまで、空港内の事務所のときもあれば、今日のように家で過ごしていい場合もある。
通常の休みとは違い、電話一本でいつ呼び出されるかわらないという状況は、気が休まらないだろう。
(仕方ないか)
小町はリビングに戻ると、テーブルの上に広げられた封筒と招待状を段ボール箱の中に片づけていった。
パイロットとの暮らしは、いつもどこか忙しない。
最初からわかっていたことなのに、今日だけは寂しさを覚えてしまう。
由桔也の書きかけの封筒をそっと指で撫でると、なぜかぎゅっと胸が締めつけられた。