拝啓、愛しのパイロット様
◇
(あ、飛行機)
仕事中だというのに、小町はたまたま視界の片隅に映った飛行機に気を取られ手を止めた。
そのまま窓の外を見つめていると、飛行機は徐々に遠ざかっていき、ものの五分で見えなくなった。
(あの飛行機はどこに行くんだろう)
誰を乗せ、どこへ旅立ったのだろう。
地上から見えるのは薄い雲の断片だけで、行き先を窺い知れない。
由桔也と一緒に暮らし始めてから、ふとしたときに飛行機の存在を感じるようになった。
一度気になリ始めると、ふとした瞬間に遠くから聞こえるエンジン音に耳を研ぎ澄ませてしまう。
彼と知り合う前は気にも留めていなかったが、小町たちの頭上にはいつも飛行機が飛んでいる。
(もしかしたら、由桔也さんが操縦しているのかも)
地上からコックピットの人間を見分けるなんて、不可能なのについ考え込んでしまう。
そんな自分の変化に、小町自身が一番驚いている。
(最近の私は少しおかしい)
小町は窓から視線を逸らし、パソコンに向かってはあっと深いため息をついた。
目の前には、ありきたりな文言の書きかけの営業メール。
由桔也が綴る言葉とはまるで違う、個性のかけらもない無機質なフォントを使った定型文が並んでいる。
(集中しなきゃ)
ただでさえ仕事が押しているのに、ぼうっとしていたら終わるものも終わらない。
そう思い直し、再びキーボードを叩き始めたそのとき、あるメールがパソコンに届いた。