拝啓、愛しのパイロット様
「これは?」
「シリアルバーばかりだと栄養が偏るぞ。ちゃんと食べないと」
目敏い由桔也は、シリアルバーの包装紙がゴミ箱に捨てられていることに気づいたのだ。
労うように大きな手で頭をポンポンと叩かれると、動揺が走る。
小町の凡庸の頭でも、先日の接触を忘れてはいない。
「あ、ありがとうございます」
なんてことない軽いスキンシップでも、やわな心臓は今にも悲鳴を上げそうになる。
嬉しいような恥ずかしいような妙な安心感がある一方、彼のちょっとした気遣いにやきもきさせられ、一挙一動に大げさに反応してしまう。
(子どもじゃないんだから。これぐらいで騒ぎすぎよ)
芽生え始めた気持ちを無理やり封じ込めるようにして、小町はハムとチーズが挟まれたサンドウィッチを口に運んだ。
(美味しい)
彼の気遣いにほっと息をつくと、するりと肩の力が抜けた気がする。
チャンスを掴みたいあまり、知らず知らずのうちに気負いすぎていたみたいだ。
これではいいアイディアだって思い浮かばない。
(由桔也さんに感謝しなくちゃ)
小町は由桔也に淹れてもらったカフェオレを飲みつつ、新たなアイディアを模索し始めたのだった。