拝啓、愛しのパイロット様

「これは?」
「シリアルバーばかりだと栄養が偏るぞ。ちゃんと食べないと」

 目敏い由桔也は、シリアルバーの包装紙がゴミ箱に捨てられていることに気づいたのだ。

 労うように大きな手で頭をポンポンと叩かれると、動揺が走る。
 小町の凡庸の頭でも、先日の接触を忘れてはいない。

「あ、ありがとうございます」

 なんてことない軽いスキンシップでも、やわな心臓は今にも悲鳴を上げそうになる。

 嬉しいような恥ずかしいような妙な安心感がある一方、彼のちょっとした気遣いにやきもきさせられ、一挙一動に大げさに反応してしまう。

(子どもじゃないんだから。これぐらいで騒ぎすぎよ)

 芽生え始めた気持ちを無理やり封じ込めるようにして、小町はハムとチーズが挟まれたサンドウィッチを口に運んだ。

(美味しい)

 彼の気遣いにほっと息をつくと、するりと肩の力が抜けた気がする。

 チャンスを掴みたいあまり、知らず知らずのうちに気負いすぎていたみたいだ。
 これではいいアイディアだって思い浮かばない。

(由桔也さんに感謝しなくちゃ)

 小町は由桔也に淹れてもらったカフェオレを飲みつつ、新たなアイディアを模索し始めたのだった。
< 128 / 149 >

この作品をシェア

pagetop