拝啓、愛しのパイロット様
(由桔也さんは……今日は福岡か)
退社した小町は、駅まで向かう信号待ちの最中スマホを操作し、共有しているスケジュールアプリで由桔也の今日の勤務スケジュールをチェックした。
アプリには、どこへフライトするか、どのホテルに泊まるのか、日帰りなのか、ステイがあるのかが事細かに記載されている。
今日は日帰りの予定らしく、フライトが問題なく終われば、おそらく八時過ぎには家に帰ってくるはずだ。
(ちゃんとお礼を言わないとな)
コンペに取り組んだこの一か月、由桔也には色々と迷惑をかけていた。
仕事終わりや休日を返上して、ああでもないこうでもないと呟きながら資料を作成する小町を気遣って家事を代わるだけでなく、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
企画書に集中できたのは、間違いなく彼のおかげだ。
(そうだ。今日はワインでも買って帰ろう)
由桔也の明日の予定を確認すると、休みになっている。
職業柄、フライトの前日はアルコールを飲まないらしいが、今日なら一緒に楽しく飲めそうだ。
(よし!思い切り奮発しちゃおう!)
小町はスマホをトートバッグにしまうと、善は急げとばかりに意気揚々と信号を渡った。