拝啓、愛しのパイロット様
「あれ?」
ところが、最後の一通に目を通し終わったときに、小町はあることに気がついた。
届いた手紙たちを消印順に並べ直してから、スマホを取り出し、フライトスケジュールと照らし合わせてみる。
「ひとつだけない?」
小町の予想は当たっていた。
他の手紙はすべて届いているのに、三週間前に行ったニューヨーク分だけが手もとにない。
別の場所に置いたのかもと思い、書斎の中を隅から隅まで探してみたが、やはりどうしても見つからなかった。
(もしかして、失くした?)
最悪の結論に達し、顔から血の気が引いたそのとき、ガチャンと鍵が開く音がした。
「ただいま」
玄関から由桔也の声がして、小町は慌てて手紙をひとつにまとめて、デスクの上に置いた。
「おかえりなさい」
後ろ手で書斎の扉をしめて何食わぬ顔で出迎えると、由桔也はそっと微笑んだ。
「ただいま。もう帰ってたんだな」
「はい」
「先に着替えてくるな」
由桔也はそう言うと、重たそうなキャリーバッグを抱えながら自室に入っていった。
彼の姿が扉の向こうに消えたと同時に、そっと息を吐き出す。