拝啓、愛しのパイロット様


 ◇

「明日ですか?」
「ああ、札幌に行ってこい」

 神城は尊大な態度で椅子に身体を大きく預けながは、さも面倒くさそうにあくびを噛み殺した。

 札幌支社から連絡があったのは、今朝のことらしい。

 札幌で開催される文房具イベントに参加予定だったが、事務上のミスが重なり、目玉である新商品が会場に届かないという緊急事態が発生したそうだ。

 せっかくのイベントなのに、SNSでも話題になっている新商品がブースに並ばないなんて許されない。
 すぐさま手を打つべきだが本格的な流通前で、現状東京の本社にしか在庫がないようで。

 明日十時の開場までに届けるとなると、宅配便でも間に合わない。
 そこで、札幌支社からのSOSを受けた上層部は本社の社員に、現地まで直接商品を運ばせることに決めたそうだ。

 白羽の矢が立ったのは、他でもない小町だ。

「あの、でも。明日は休日で……」
「上司命令だ。それとも札幌支社の連中を見捨ててもいいと思っているのか?」

 都合の良い揚げ足をとり、小町を故意に貶めようとする神城の態度に、ぐっと押し黙る。

 上層部をどう言いくるめたのかわからないが、誰を札幌に向かわせるのか、人選は彼に一任されているようだ。
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