拝啓、愛しのパイロット様
その夜、残業を終えた小町は、札幌に持っていく新商品がパンパンに詰まったキャリーケースを携えて帰宅した。
「ただいま……」
小声で帰宅を知らせても、『おかえり』と返ってくる声はない。
【明日は早いから先に寝るよ】
帰る途中で送られてきたメッセージ通り、由桔也は早朝のフライトに備えて既に寝ているようだ。
起こさないように忍び足でリビングに入ると、ダイニングテーブルの上には由桔也が作っておいてくれたハンバーグとサラダ、スープが並べられていた。
彼の心遣いをありがたく思いながら温め直し、ひとり黙々と夕食を口に運ぶ。
手早く夕食を済ませシャワーを浴びたら、さっさと布団に潜り込み、明日に備えて目を瞑る。
ところが、布団に入って数分後。
ようやく眠気が訪れようとしたそのとき、記憶の糸が不意に繋がり、小町は布団を足で跳ね上げ飛び起きた。
(もしかして……!)
枕元に置いたスマホをすぐさま手に取り、由桔也の明日のスケジュールを確認していく。
暗い室内にスマホの液晶が煌々と輝く中、スケジュールには次のように書かれていた。
【AM6:50、新千歳行き】
数時間前に予約したチケットと時刻も行き先もまったく同じだ。
自分が見たものが信じられず、小町はスマホを握り締めたまま天井を仰いだ。
まさか、由桔也の操縦する飛行機に乗り合わせるなんて夢にも思わなかった。