拝啓、愛しのパイロット様
『飛行機は後ろ向きに進めないから、ターミナルから出るときは専用の牽引車でプッシュバックしてもらうんだ』
プッシュバックが終わると、今度は滑走路を目指しゆっくりと前へ進み始める。
(飛行機を飛ばすのって、大変なんだな)
パイロットと暮らした影響なのだろうか。
由桔也の仕事に繋がっていると思うだけで、飛行機に関するすべての出来事に興味をそそられてしまう。
そんな自分に不思議な感覚を覚えながら、窓から移りゆく景色を眺めていた小町は、機体が止まり始めていることに気づいた。
(あ、離陸するんだ)
CAから離陸のアナウンスがあった数分後、ジェットエンジンが轟音をたてるやいなや飛行機が再び動き出す。
滑走路を走っていた先ほどとは打って変わり、座席に身体を押し付けられるほど強い力を感じる。
あっという間に滑走路を駆け抜けたかと思うと、揚力を得た重たい機体がふわりと浮き上がる。
飛行機はみるみるうちに空港から離れ、紺碧の青空に飛び立った。
(うわあっ……)
無事離陸を果たし、旋回していた機体が水平に保たれしばらくしてから、機内にアナウンスが流れる。