拝啓、愛しのパイロット様
『皆様、おはようございます。本日はブルーセントラルジェットをご利用いただき、まことにありがとうございます。この飛行機はBCJ234便、新千歳行きです。当機のフライトは機長は平尾。副操縦士は宇佐美でございます。皆さまをご安全に目的地までお届けします。短い時間ですが、快適な空の旅をお楽しみください』
聞き慣れた由桔也の声が機内に響き、サービングされたドリンクを飲んでいた小町はにわかに色めき立った。
(由桔也さんだ……!)
普段の弾むような軽快な声色とは異なり、やや堅めの落ち着きのある口調だ。
よどみなく発せられる機内アナウンスには、パイロット業務に従事する責任感と安全に対する自負が満ち溢れていて、なぜか小町まで誇らしい気持ちになる。
(さすがだな)
小町は座席に深くもたれながら、信号機も標識もない広い空の下で針路を取る彼に心の中で拍手を送った。
今日は雲が少なく、窓からは地上の様子がよく見えた。
雲を切り裂くようにそびえ立つ青々しい山も、太陽の光に照らされ淡く光る海も、彼がいつも眺めている景色だ。
小町はそれらすべてに思いを馳せながら、機内での時間を過ごした。
その後、飛行機は一時間四十五分の快適な空の旅を終え、定刻通り新千歳空港に到着したのだった。