拝啓、愛しのパイロット様

「お疲れ様でした!」

 夕方になり来場者が落ち着いた頃、小町は札幌営業所の面々に別れを告げ会場を離れた。

(帰りの便まで時間があるな)

 空っぽになったキャリーケースを引きながら、スマホで時間を確認すると、午後四時を過ぎたばかり。

 復路は午後八時二十分の便を予約している。
 電車に乗る時間を差し引いても、まだ二時間以上の余裕がある。

 今日の由桔也は羽田空港と新千歳空港を一往復半したのち、空港近くの千歳市内に一泊して、翌日の朝今度は福岡まで飛ぶ予定らしい。

 おそらく今はフライトを終え、明日に備えてホテルで身体を休めているはずだ。

(由桔也さんがステイしているホテルまで行けそうなんだよな)

 小町はスケジュールアプリに記載されたホテル名を地図アプリで検索し、札幌市内からの経路を既に確認していた。

 教えてほしいと一度も言っていないにもかかわらず、由桔也はいつもステイ先のホテルについて教えてくれる。

『いつでも来ていいよ。歓迎する』

 冗談交じりの発言を真に受けて、本当にステイ先にお邪魔してしまっていいのか悩ましい。

(まさか本当に会いに来るなんて思っていないんだろうな)

 小町は驚く由桔也の顔を思い浮かべ、クスリと笑った。
 サプライズなんてまともにしたことがないけれど、いつも冷静な彼が狼狽える姿を見てみたいという誘惑には抗えない。
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