拝啓、愛しのパイロット様
(フライトの感想も早く伝えた方がいいしね)
小町は自分で自分の気持ちを取り繕うと駅へ足を向け、電車に乗り込んだ。
きっと、少し前だったら会いに行こうなんて考えもしなかった。
由桔也とキスをしてから、小町は少し変わったみたいだ。
(会えるといいな)
そう願いながら電車に揺られること、三十分。
駅に降り立った小町は今度はタクシーに乗り込み、ホテルへ向かった。
さすがにエントランスに直に横づけするのは気が引けて、少し手前の通りで降ろしてもらう。
由桔也が宿泊するホテルは目と鼻の先の距離だ。
エントランスが見えるあたりで立ち止まり、スマホを操作する。
あとは電話して、呼び出すだけ。
もし、電話に出なかったら、そのときは何食わぬ顔をしてマンションで由桔也の帰りを待てばいい。
(出るかな?)
小町が期待に胸を膨らませながらスマホを操作し、由桔也に電話をかけようとしたそのとき。
エントランスから、一組の男女が腕を組みながら出てきた。
「え……?」
小町は思わず男性の顔を二度見した。
にこやかな表情で女性に話しかけていたのは、今まさに電話を掛けようとしていた由桔也その人だったからだ。


