拝啓、愛しのパイロット様
いつ見つかるかわからない緊張の中でひとり悶々としていたそのとき、ふたりのいるテーブル席に動きがあった。
「遅くなってごめん。これ……」
由桔也はそう言いながらジャケットのポケットから、張りのある黒革製のジュエリーケースを取り出し、テーブルの上に置いた。
彼女はジュエリーケースを手に取り、蓋を開けるやいなや、目を見開いた。
ただでさえ大きな瞳を何度も瞬かせ、やがてとびきりの笑顔を向ける。
「うれしい。ありがとう!」
彼女の手によってジュエリーケースから取り出されたのは、離れた場所からでもわかるほど大きなダイヤモンドがついた指輪だった。
涙を流しながら左手の薬指に指輪を嵌める彼女を見た途端、すうっと頭が冷えていくのがわかった。
小町はカフェオレを一気に飲み干すと静かにお会計を済ませ、由桔也たちに見つからないように、そっと店から姿を消した。
(なんで、指輪を渡していたの?)
二人の間に漂うただならぬ雰囲気、光り輝く美しい指輪。
まるでプロポーズの一幕のような光景が、いまだに頭から離れない。
(もしかして、あの人が本命?)
一度に色々な情報が押し寄せてきて、頭の中がまだ整理できていない。
二股をかけられていたのかもしれないと考えるだけで、じわりと涙が滲みそうになり、慌てて目尻を指で拭う。