拝啓、愛しのパイロット様
(帰ろう)
そう決意した小町はトートバッグの肩紐を痛いほど握りしめた。
奈落に突き落とされたような絶望的な気持ちのまま、小町はとぼとぼとひとりで空港へ向かった。
ときおり気まぐれに吹く風が、身体を芯から凍らせていくが、一向に構わなかった。
空港に到着すると、羽田行の便に空きがあるか真っ先に確認する。
空席があるとわかると予定の便を前倒しにして、飛行機に飛び乗った。
往路とは異なり、飛行機は離陸直後から大きく揺れた。
予期せぬタイミングで訪れる乱気流は、小町の心を表しているようだった。
(私、由桔也さんが好きだったんだな)
ガタガタと揺れる座席の上でようやく自覚したのは、由桔也への恋心だった。
こんな形で気がつくなんてあまりにも間抜けすぎて、乾いた笑いが込み上げてくる。
彼を信じたいと思っていた時点で、もう引き返せないところまできていたのだ。
(バカだなあ、私……)
いまさら自覚したところでどうしようもない。
この胸の痛みが愛を信じようとした代償ならば、甘んじて引き受けなければならない。
小町は傷心のまま札幌から帰宅した。