拝啓、愛しのパイロット様
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由桔也が帰宅したのは、小町が札幌出張に行った翌日、日曜の昼過ぎのことだった。
「ただいま、小町」
「おかえりなさい、由桔也さん」
小町は自分の気持ちを押し殺しながらいつも通り由桔也を出迎えた。
彼は美女と密会していたなんて、おくびにも出さなかった。
帰宅の挨拶もそこそこに、キャリーバッグを自室に下げ、着替えを始めるその様子には一切の乱れがない。
(いつもと変わったところはない、か……)
由桔也の様子を観察していた小町は、そっと息を吐き出した。
あまりにもいつも通りすぎて、なんだか拍子抜けしてしまう。
ひょっとしたら昨日の出来事はなにかの間違いじゃないかと、都合よく考え始める自分もいる。
彼がくれたキスも想いのこもった手紙も、すべて嘘だったとは思いたくない。
「小町」
物思いに耽っていた小町は名前を呼ばれてハッと顔を上げた。
いつの間にか着替えを済ませた由桔也が目の前に立っている。