拝啓、愛しのパイロット様
◇
(由桔也さんがパイロットでよかった)
普通の社会人なら同じ部屋に住んでいる以上、どんなに気まずかろうが嫌でも顔を合わせてしまう。
けれど、相手がパイロットならスケジュールが合わないのが普通だ。
ステイ先での隠し事で気分が沈んでいるのに、彼の職業の特殊性に助けられるなんて皮肉な話だ。
いつかは向き合わなければならないとわかっているものの、どうしても踏ん切りがつかず、二週間経った今でも真相は闇の中。
釈然としない思いを抱えながら淡々と日々を過ごしていた矢先、追い討ちをかけるように、社内コンペの結果が発表された。
(ダメだったか……)
全社一斉メールに添付されていた【選考結果のお知らせ】に目を通した小町は、がっくりと肩を落とした。
残念ながら目を皿のようにして眺めても、どこにも自分の名前は載っていない。
厳しい現実は小町を不幸のどん底に叩き落とすのに、充分な威力を発揮する。
(自信あったんだけどな……)
大きなため息をつきながら、何時間もかけて作った企画書の電子ファイルを『ボツ』と名づけたフォルダに移す。
いつまでも、くよくよしてばかりではいられない。
企画書がボツになったからといって、仕事は待ってくれないのだから。
気を取り直しキーボードを叩き始めたそのとき。
「残念でしたね……」
先ほどのため息を聞いていたのか、乾は落胆する小町の様子を窺うようにそっと慰めの言葉をかけた。