拝啓、愛しのパイロット様
「まあ、こればっかりは仕方ないよ。またチャレンジすればいいし」
気遣いを感じた小町は、見栄を張り本音を隠しニコリと笑顔で応じた。
「私、小町さんが考えた文房具を使ってみたかったなあ」
「ありがとう、乾さん」
お世辞ではなく本気で思っているのが、言葉から充分伝わってくる。それだけで報われた気持ちになれる。
「そうだ小町さん!今日のランチは奮発して丸福に行きませんか?」
乾はどんよりした空気を変えようと、一際明るく提案した。
丸福とは会社の近くにある鰻料理の専門店だ。
炭火で焼いた鰻を秘伝のタレにつけお重に載せた特上鰻重はランチでも人気だ。
もちろん、小町も乾もこの鰻重が大好きだ。
「そうだね。行こうか」
「小町さんが好きなう巻きも食べましょう!」
「ははっ。そうだね」
から元気だったのはお見通しだったようだ。彼女が小町を励ますつもりで提案してくれたのは間違いない。
ランチとしてはお高めなので、特別なときにしか食べに行けないけれど、夢破れたこんな日ぐらいは贅沢しても許されるだろう。
小町はランチタイムを楽しみにしながら、黙々と仕事をこなしたのだった。