拝啓、愛しのパイロット様

「すみません、小町さん!もうちょっとかかりそうです……」

 待望のランチタイムになったというのに、乾は申し訳なさそうに眉をハの字に下げ、両手を合わせて平謝りした。

 ことの始まりは十分前。取引先からふいにかかってきた電話が発端だった。

 導入したばかりの受発注システムで入力を間違えたのか、想定の数量以上の商品が納品されたらしい。

 ときどきあるタイプの問い合わせだったが、今回はタイミングが悪かった。

 返品処理の対応に追われ、ランチタイムにまで食い込んでしまったのは不運としか言いようがない。

「わかった。じゃあ先に行って、並んでおくね」

 言わずと知れた人気店の丸福は、昼になるとすぐに席が埋まってしまう。先に行って待っていた方が無難だろう。

「すみません。終わったらすぐに行きますから!」
「ゆっくりでいいからね」

 小町はひらひらと手を振りながら財布とスマホを手にして、乾を営業部に残しひとり廊下を歩き始めた。

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